牛のこころ、人知らず

木曜日, 1月 28, 2016

酪農コンサル3

コンサル先から次回の日程の打合せで、チモシー乾草を飼槽を掃除した後に1kg程度給与して2週間で糞が硬くなってきたそうです。
糞性状が良くなれば第1段階はOKなので、次のステップに進むことになります。
そこで硬い繊維質の粗飼料を食べささせるためにはどうするかという問題があります。
これは、硬い繊維質だけでなく、食べない自給飼料も含みます。
問題は、生産性を下げないで食べさせることですが、以前酪農家で行ったことは、乳生産が低下したために栄養供給を意識が高くなり濃厚飼料(配合飼料)をより多く給与していました。
話を聞くと、乳量が下がるのは栄養が不足していることでないかと考えて栄養価の高い濃厚飼料を増やした結果、より乳量が下がってしまい、メーカーに相談すると「牛が痩せているのでカロリーを増やした方がよい」とアドバイスされて穀類を別途増やしました。
その結果、より乳量が下がり、種付けも駄目!、乳質も駄目!(出荷停止になった)と散々たる状況でした。そこで改善策は、濃厚飼料を順次減量して硬い繊維質のイナワラを給与させました。
その結果、濃厚飼料は半分でイナワラ4-5kg程度食べて乳量は50%増えました。
このケースは、濃厚飼料が多すぎてルーメンおよび腸管での機能不全になっていたので濃厚飼料を減らして「腹が減ったヨー」状態にすることでイナワラを食べてくれたあるいは牛が欲していたのかもしれません。
結局、濃厚飼料の給与量と繊維質(粗飼料)のバランスが重要であることは基本です。
しかしこのことが実際の現場では上手く行われていないために問題起こるのです。
特に、TMR飼料は難しい技術であると思います。
食べさせるものを人の都合だけで決めているのですが牛がもう少し繊維質だけ欲しいと思っても濃厚飼料も食べさてしまうことになってしまいます。
硬めの繊維質を食べさせるためには、濃厚飼料を少なくするだけでは上手くいかないこともあります。そこでどうすればよいかを長年試行錯誤してきましたが、偶然だったのですが食用油製造過程で発生する不鹸化物がルーメンプロトゾアを増殖することは確認しています。(論文投稿予定)
またルーメンジュースの培養ではガス発生量が多くなることも確認しており、プロトゾアだけでなく細菌類も増殖していると思われます。
この不鹸化物は、肉牛でも乳牛でも効果がありますが、乳牛では肉牛の2倍以上の給与をしないと効果が見えません。
これは、この不鹸化物にはビタミンEが含まれており、抗酸化作用があることからルーメン内の環境が乳牛では酸化ストレスが高くなっているのではないかと考えています。
酸化ストレスを緩和することでルーメン微生物の活性が高まる(回復する)ことにより硬い繊維質の摂取量も高まると思われます。
乳牛については、食肉市場で枝肉になった状態に見られる枝肉表面の酸化してひどいものは泡立ったようなものまで見られます。
乳牛の酸化ストレスは、思った以上にひどい状態になっているのではないかと思います。
酸化ストレスも牛ルーメンおよび下部消化管機能と連動しているので繊維質の重要性を認識する必要がありますね。