牛のこころ、人知らず

月曜日, 5月 27, 2024

飼料の乾物摂取量を高めること

 今月になって久しぶりに北海道に行きました。

目的は乳牛へ商材の試験依頼が主な要件でした。商材は、築野食品工業㈱が開発した飼料用ライストリエノール混合飼料です。これは、こめ油生成過程で発生する副産物でビタミンEを豊富に含むっすべての家畜(鶏、豚、牛)に利用できるものです。

これまでは、豚や肉用牛への販売はされてきていますが、乳牛への給与についてはまだ手を付けていないので今回泌乳牛への給与試験の依頼で大学や試験機関に行きました。

この飼料用ライストリエノール混合飼料は、ビタミンEの1種であるトリエノールを豊富に含んでいる特徴的なものです。

ビタミンEは、天然ではα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類があり、トコフェノールとトコトリエノールのそれぞれ4種類あるので、合計で8種類の化合物の総称となります。


ビタミンEは、トコフェノールが有名で飼料向けではほとんどトコフェノールが使われています。トコフェノールは、化学合成でも作られており、添加物などの表示にdl-トコフェノールと書かれていれば化学合成物です。

トコトリエノールは、天然由来しかなく家畜向けにほとんど利用されていませんでした。トコトリエノールは、トコフェノールよりも40‐50倍の抗酸化力があり、「スーパービタミンE」と呼ばれています。

また合成化合物と天然由来では、1.5倍の抗酸化があるといわれています。(厚生労働省より)

肉用牛では、当初は肥育牛主体で利用されていました。これは、この飼料用ライストリエノールの抗酸化力を利用して生米ぬかを混合した肥育用配合飼料を設計したことが始まりでした。

肥育用配合飼料に生米ぬかを使うと酸化したり、変敗することから品質保持の面から通常利用できません。生米ぬかは、北海道で一部使われていますが都府県ではほとんどありません。この配合飼料を開発するにあたり、実際に飼料用ライストリエノールを混合した製品を1か月(7‐8月の期間)飼料タンクで保存試験を行ったところ全く変敗しない保存が出来て牛への給与も問題なくできました。

この保存試験の結果は、一般的な常識から考えると正直かなり驚きました。

生米ぬかは、農家でも配合飼料に毎日混合して給与することが一般的な方法なので配合飼料に使えることは革新的なことと思っています。

この生米ぬかを肥育用配合飼料に使うことは、黒毛和牛での脂肪質を改善することに貢献できることです。

配合飼料で粗脂肪含量を高める原料は限られています。一般的はトウモロコシや大豆になりますが、その他にコーンジャムやホミニフェード、油粕類(搾油ごの残渣物)があります。

トウモロコシは、胚芽に脂肪を含んでいますがその割合は3.8%で、高脂肪を含む品種としてハイオイルコーンでは、7.1%、最近利用されている中脂肪トウモロコシは5.8%になります。大豆は、約20%程度で、脱脂大豆粕1.9%、きなこ20%、とうふ粕11.6%程度です。

肥育用配合飼料は、粗たんぱく質(CP)は11ー13%なので大豆はタンパク質割合が大きくなってしまうので多くは使えません。そこで価格面からもトウモロコシ主体になってしまいます。トウモロコシはでんぷん質も多いのでカロリー面からも使いやすい原料です。

ちなみにコーンジャムは、トウモロコシ胚芽そのもので脂肪分は45%程度含まれているが脂肪分が多いことから”火を噴く”(発火する)ことで製造工場での管理が難しいことと輸入するときに保険が掛けれないことから利用は難しい原料です。

その他、搾油した粕類もありますが、搾油後は脂肪分は多くないものが多いです。

なぜこのように脂肪原料を述べるかといえば、最近相談が多くなっているのが北海道で行われる和牛全共対策です。和牛全共で肥育牛の脂肪質を評価する採点方式なってオレイン酸を中心とした1価不飽和脂肪酸含量を高めることが求められています。

和牛肉での脂肪質は、遺伝的改良により脂肪交雑割合が高まり含まれている脂肪量が枝肉中50%を超えていることも要因です。すなわち脂肪が多くなったから脂肪が硬いと口溶けが悪く”美味しくない”と評価されるようになったためです。

脂肪の味は、最近の研究から舌で感受することができることがわかっており研究が進んでいます。そのために余計脂肪質が重要になっています。

その脂肪質については、別の機会にします。

元に戻ると飼料用ライストリエノール混合飼料は、抗酸化だけでなく乾物摂取量を高めることも認められています。これは、含まれている成分がルーメン微生物を活性化することでルーメン分解性が高まるために起こるものです。

泌乳牛においては栄養充足よりも乾物摂取量が優先しますが、粗飼料の品質状況によって摂取量が変動します。その変動は、粗飼料を食べないことなので当然反芻・咀嚼が減少することになります。反芻・咀嚼が減少すると唾液分泌が減るのでルーメンの恒常性で重要なpHのコントロールが効かなくなります。ルーメンpHのコントロールができなくなるといろいろな疾病の要因となります。

この飼料用ライストリエノール混合飼料により乾物摂取量を高める(安定させる)ことで乳牛の健康性を維持できる(もちろん粗飼料:繊維分)ことです。

粗飼料は、自家生産でも購入でも常に同じ品質は維持できないためにその変動幅を少なくすることが必要です。

乳牛の研究では、高品質な粗飼料生産と配合飼料による栄養管理が主体ですが、現在の飼料価格の高止まり、円高による輸入粗飼料の高騰の状況から高コストな生産から低コスト生産で乳量を維持できる技術が必要だと思っています。

例えば、稲わら(稲ホールクロップ:WCSではなく)を泌乳牛に給与する技術です。

一昔前に渡辺高俊さんの2本立て給与など稲わら利用する技術を現代版にする必要があります。そのために飼料用ライストリエノール混合飼料をうまく利用する技術(方法)を進めていくための乳牛給与試験を研究機関と進めていきたいと考えています。

日曜日, 11月 06, 2022

乳房炎とストレス

 ”死んだ乳”でまずい乳になると細菌感染が拡大する兆候の1つになりますが、その乳房に異常な状態になる要因として下痢便を挙げました。

下痢になる要因は、繊維分の摂取量が減少して消化分解の速い濃厚飼料の割合が多くなると起こりやすくなりますが、分娩前にこの現象に注意を払っている農家さんが少ないことも問題です。

また下痢便になっているからその対処方法がわからないということがあります。教科書的には分娩前には良質粗飼料を給与すること、分娩後に給与する飼料の給与を始めること、栄養を十分に与える(特にタンパク質を)といったことになります。

どうも農家さんの潜在的に栄養を十分に与えることが重要であるという意識が強いことも影響していると思われます。これは、飼料計算のデーターを信じて乳生産や繁殖管理には栄養バランスが大事であるといったことが要因です。

先日、養豚のコンサルをされている方と話をしする機会がありました。そこで話題になったことの1つに豚舎で豚の状態を見ることができない人(飼料メーカーの担当者など)が

ほとんどで実際に起こっていることがわからないので自分が勧める商材を使わせることが多くなっていると話されていました。牛舎においてもまったく同様ですね。

乾乳期が重要であるとどの教科書にも書いてありますが、乾乳期の牛の状態(ボディコンデションだけでなく)がどのようになっているかはほとんどありません。

下痢は、人の場合では体に力が入らなくなり食欲も減退してしまいます。牛はしやべらないのですが、分娩前に下痢便になっていると想像以上にストレスを受けていることになります。

乾乳中で乳房炎に罹患する危険率が高いのは、乾乳直後と分娩前に時期ですが、乾乳直後は乳房に残る残乳が問題です。最近は、乳量が30㎏以上で乾乳するケースが増えており高泌乳牛ほど苦労しているようです。無乾乳が一番手っ取り早い方法ですが、意外とこれを嫌っている農家さんが多いことに驚きました。そこで友人が取り扱っている泌乳ホルモンであるプロラクチンを阻害する成分を含んだ商材があるので困っている農家さんには紹介しています。これは液体で乾乳時に1回飲ませるものです。24時間で結構乳房が萎んで今まで乾乳すると鳴いていた牛が鳴かなくなったそうです。

分娩前については、漏乳が問題です。漏乳は、すべての乳頭から漏れるわけではないのですが問題は漏乳していない乳頭が乳房炎感染しやくなっています。漏乳している乳頭は、流れ出ているので乳槽に溜まらないので細菌繁殖しにくいのですが、同じ牛なので乳頭の緩さは同じですので漏れていない乳頭が細菌感染の危険性が高まります。乳牛の改良で乳量が増加すると搾乳時間を短縮するために乳頭穴が大きくなっているのではないかと考えています。

この漏乳対策は、分娩前であっても漏乳がひどいと手っ取り早く搾乳することです。これだけでも乳房炎の危険率が低下します。また給与している飼料の内容を再検討が必要ですが、フリーバーンやフリーストールでのTMRによる乾乳管理では難しいと思われます。

そう言ってもTMR給与であれば、別途乾草の給与を勧めています。乾草は、TMRに入れないで24時間いつでも牛が食べられるようにすることです。具体的には牛舎構造や飼槽の状況、給与できる粗飼料の質などを見て考える必要があります。

この分娩前で粗飼料摂取量を高めることができる飼料を給与して改善している事例もあります。これは、主にビタミンEと脂肪による効果ですが、ビタミンEの原料がトコトリエノールが主体で通常のビタミンEに使われているトコフェノールとは異なったものです。トコトリエノールはスーパービタミンEと呼ばれてトコフェノールよりも40~50倍の抗酸化力があります。また脂肪の成分は植物ステロールを含んでおりこの成分は微生物の活性を高める効果があるので粗飼料摂取が上がります。

乳房炎になった場合に行う対策の1つとして、乳房から”ブツ”が出たらビタミンAD3Eの液剤を飲ませます。但し飲ませる量は、最低でも1,000万IUを投与します。ひどい場合には2,000万IUになります。通常液体のビタミンAD3Eは1ml当たり2万5千IUなので1,000万IUは400ml、2000万IUは800mlになります。(かなりの量ですよ)

このだけ飲ませるとかなり反応がよく現れます。これは、ビタミンAは、肝臓に90%程度蓄積されているのですが肝細胞が少なくなると貯蔵する容器が小さくなると欠乏しやすくなります。肝細胞が低下することは、飼料管理の問題点が主な要因です。

その結果として何が起こっているいるかというと抗酸化物質が少なくなり体の酸化作用が進んでしまい生産性が維持できなくなり廃用になってしまいます。

下の写真は、食肉市場で見られる乳牛の枝肉ですが、表面が泡のようになっています。これだけひどい状態でよく生きていたと思われるような状態です。

このような管理状態では、ストレスから乳房炎になるのも妙な意味で”納得”します。








日曜日, 10月 30, 2022

乳房炎対策を考える

 乳房炎は、めんどくさい。

乳房炎になると搾った乳は廃棄することになるが、牛のエサを食べさせない訳にはいかないから飼料代はかかるけど収入はゼロということなってしまう。

マイナスばかりでいいことは1つも起こらない。

乳房炎になる原因については、専門家による研究により色々とあるが決定的な要因ははっきりしないというのが多いので、牛舎の中では考え込んでしまう。

乳房内(乳槽)では乳が生産されているが乳房内にあるうちには基本腐らない。

血液と同じで血液も血管内にあるうちには腐らないがいったん血管から出てしまうと固まる(凝固)してしまう。血液が細菌感染してしまうと敗血症になってしまい命の危険になってしまう怖い病気である。

乳も乳槽内では抗菌性物質(ラクトフェリン、ラクトオキシダーゼなど)により細菌繁殖が抑えられているので増殖することはないが、この抗菌性物質が減少してくると細菌が増殖することになり、炎症が発生しやすくなってしまう。

この状況が乳房炎は発症した状態であるが、難しいのは抗菌性物質が減少する要因が何であるかである。

1つ考えられるのは、下痢状態である。下痢便をしている時の乳を舐めるを通常の乳とは全く異なる味になっている。とってもまずいのである。こうなっていると乳は”死んだ乳”となっており細菌繁殖が活発になり炎症が発生してしまう。

この過程での乳は、すべてが”死んだ乳”ではなく、最初の乳は”死んだ乳”、途中は”生きた乳”、最後は”死んだ乳”という状況になり、これがだんだん進むとすべての乳が”死んだ乳”になってしまう。そのために乳房炎の全頭検査を牛舎で行うと多く牛が潜在性タイプの乳房炎が発見されやすい。すなわち最初の乳を検査するために”死んだ乳”が出てしまい陽性反応が出てしまうのである。

下痢便状態は、牛とっては人が思っていよりも大きなストレスがかかっていることになる。

黒毛和牛の繁殖農家を巡回すると、分娩した子牛が虚弱な事例が多い。これは乳牛の乾乳期と異なるが分娩後に子牛に授乳させるためと繁殖のために濃厚飼料の増し飼いを行うことが要因の1つである。

牛の場合胎児の増体量が分娩前に大きくなるなるために消化器官が圧迫されて(特に第1胃:ルーメン)摂取量が低下してしまう。そこで濃厚飼料の増し飼いをすると粗飼料(繊維質)の摂取量が低下してしまう。そのために繊維不足により軟便や下痢便になりやすくなる。

その対策としては、良質粗飼料給与をするということが教科書には書いてあるが、良質粗飼料の定義が書いてあるものを見たことはない。ここでは良質粗飼料とはを考えていると長くなるので別な機会にするとして、分娩前に給与する粗飼料は、「良く食べること」と繊維質が「硬い」ことが必要となる。

しかしそのような粗飼料がない場合には、「どうしましょうか?」となります。その時には、糞性状が硬くなるまでしか「濃厚飼料の給与」が出来ないということになります。

糞性状に応じた飼料給与を考える必要があるということです。

下痢便状態で分娩すると「子牛が虚弱」、「初乳が薄い(濃度が)」、「子牛が取り込む糞由来微生物が悪い菌になる」という3重苦になります。そのために子牛が虚弱で下痢や風邪を引きやすく発育が遅れることになります。(下図参照)

もし乳牛でも分娩前に軟便や下痢便であれば「子牛が虚弱」、「初乳が薄く」、「取り込む常在菌が悪い」の3重苦なります。ホルスタインの子牛価格が極端に安くなっている現状では和牛受精卵移植やF1を生産する方向にありますが、子牛の疾病が多くなってしまいます。

当然、乳房内での抗菌性物質が少ないので乳房炎罹患率が高くなります。分娩後に乳房炎が発生しやすい牛舎では、分娩前の糞性状をチェックしてみる必要があります。




日曜日, 3月 14, 2021

乾草がないとどうするのか?

 最近相談がおおくなったのは、輸入乾草であるチモシーの品質が悪くなって牛の食いが悪くなったという相談です。

昨年のアメリカの天候が不順でチモシーだけでなく乾草自体が不作であったために良質なものが少ないことが原因です。

しかし、このようなことは過去もあったので、それにどのように対応できるかが牛飼いの”腕”になりますよね。

黒毛和牛の肥育農家で素牛を子牛市場から導入している農家では、導入してから肥育前期の期間にチモシー乾草の給与をしている牧場が多くあります。チモシー乾草は、繊維質があり、タンパク質とエネルギー(非繊維性炭水化物=糖、デンプン、ペクチンなど)のバランスが取れています。嗜好性も良いので利用されています。

そのチモシー乾草が悪くなると肥育牛の仕上がりが悪くなります。これは肥育前期の粗飼料給与が非常に重要であることを示す例となります。

どうして肥育牛の前期での粗飼料の重要性は、牛の肋張り作りを行うことです。牛の肋張りは、いわゆる体幅を作ることですが体高よりも体の幅が大事な要素です。牛を買うなら肋張りが良い牛を買え!と昔は言われていました。(今はこんなことを言う人はほとんどいませんが)

肋張りが良い(大きい)と何故良い牛の理由は、人も含めて肋骨覆われている部分には肝臓や心臓などの重要な臓器が収まっています。このことから肋張りが良い牛は丈夫で長持ちすることになります。昔は、牛を農耕用に役牛として使っていたので丈夫な牛であることが重要でした。今のように昔は薬や検査ができない時代でしたのでいかに牛を”目利き”できるかが重要でしたので間違いないことでしょうね😲

ところでこの肋張りを出すために乾草が必要なのですがそのの乾草が悪いと肋張りは出来ません。乾草が悪いというのは、1つは嗜好性が悪い(食べない)ので摂取量が不足してしまうことになり、もう1つは繊維の質が悪いことです。繊維の質が悪いということは繊維の硬さが少ないことです。繊維が少ないことと軟らかいことは似ていますが少し違う点があります。繊維が少ないのは、硬い草であっても草を畑で乾燥させるために草を撹拌(テッタをかける)する回数が多くなると繊維を壊してしまいます。壊れた繊維は牛が食べる時に咀嚼回数が少なくなるので同じ量を与えても”繊維が少ない”状態になります。当然軟らかいと咀嚼回数が少なくて嚥下できるので同じような状態になります。

繊維が多い草と繊維が少ない草を化学分析を行うと数値の差がほとんど出ないのです。これは化学分析をするときに粉砕して機械にかけるので牛の反応と異なるのです。この点は牛舎で繊維を確認(実際に触って)して牛を良く見る(行動や動作から)ことをする必要があるのです。

肋張りを出すためには繊維を多いものが必要ですので、最初のテーマに戻ると咀嚼が十分にできる繊維を草を与えることです。

コンサルで行う方法の1つとしては、稲わら給与になります。ただ稲わらだけだとタンパク質やミネラル、ビタミンが少ないので補給としてルーサンペレットやヘイキューブの給与が必要です。実際に稲わらだけでは、タンパク質不足によりルーメン微生物の繊維分解能力が低下して糞が硬くなり便秘なったりひどい場合は第4胃に未分解の稲わらが詰まってしまうような例があります。

稲わらを上手に使うことで対応可能ですが、もちろん稲わらと一括りではなく品質も大事な点です。



日曜日, 2月 07, 2021

鉄と牛

窒素と加里は植物が贅沢吸収してしまうので土壌分析をすると土壌中には少なくあります。そこで土壌分析だけで評価すると施肥する窒素や加里が多くなります。そのために作物のミネラル成分を分析して土壌分析値と合わせて考えることが必要です。

土壌分析で加里が少なく植物のミネラル分析で加里が多いと過剰に吸収している可能性が高くなります。また他のミネラル成分ではカルシウムとマグネシウムもチェックが必要です。これは窒素と加里をたくさん吸収するとカルシウムとマグネシウムを拮抗作用で吸収されにくくなりバランスが悪くなっています。このカルシウムとマグネシウムが少なくて加里が多くなっていると肥料設計の考えてみることです。

ところでカルシウムとマグネシウムが多い米は食味が良いとされています。このバランスの良い米として有名なのが蛇紋岩米です。蛇紋岩はかんらん岩が水と反応と水と反応して蛇紋岩化作用により生成されたものです。かんらん岩はマントルの上部を構成する岩石の1つです。

この蛇紋岩からはマグネシウム(苦土)原料として使われたりニッケルやクロム、石綿の鉱物資源と利用されている。この蛇紋岩は脆くて崩れやすい材質であるために土木工事や掘削工事では難しいとされている。そのために蛇紋岩質がある地域では蛇紋岩由来のマグネシウムの多い粘土が多い土壌が形成されるために米の食味がよくなるのです。この蛇紋岩米の生産地が兵庫県の養父地方になります。兵庫県からの中国山地や岩手県のほか千葉県の嶺岡から三浦半島に大きな分布があります。ミネラルが多い作物が多いところが牛の産地と重なっていることがわかります。

また中国山地はたたら鉄の一大産地でした。中国山地の周辺は砂鉄がたくさん取れたことが生産地の要因の1つですがもう1つ大きな要因があります。

島根県の木次町(現雲南市)に山地酪農を行っている日登牧場に行った時に山を切り開いて日本芝生を植えて造成しているのですが10年くらいで木が生えてくるという話を聞きました。これはたたら鉄には大量の木炭が必要なので当然大量の木材が必要です。中国山地は木材の再生能力が高い地域でもあったわけです。そのために大量のたたら鉄の生産をすることができたのです。

鉄については、微生物の繁殖に重要な役割があります。南氷洋は、栄養分が多い海域で有名ですが鉄が少ないために植物プランクトンが少なくて食物連鎖が起こりにくく漁獲量が少ないのです。ところが瀬戸内海は、漁獲量が面積に比較して多くなっていることから中国山地からの鉄流入が影響しているとされています。(現在は事情が異なっていますが)

このことは、土壌でも起こりうる可能性があり中国山地の木材の生産性も鉄が影響していると思います。(気象条件などの環境要因もありますが)

鉄の生産量が多くなるにつれて日本では鉄製の農機具が発達して開墾が進み生産量が増加して人口が増加したと考えられます。この鉄生産と牛も関連があります。蛇紋岩と鉄により牛に適した草が豊富に取れたことも影響がありますが、もともと日本には牛がいなくて牛は朝鮮半島などから導入されたと云われており現在の牛の遺伝子を調べると欧州型であることもわかっています。鉄を生産した場所は山間地が多いことからたたら鉄の産地から鉄を持ち出すために多くの馬と牛が使われておりこの鉄生産と合わせて牛の改良も行っていたとされています。卜藏家(ぼくらけ)が優良な牛を導入して改良を行い卜藏蔓を作りこの血統が第7糸桜につながっています。

宮崎駿の「もののけ姫」はたたら鉄の物語ですがこれに牛が出てきていますよね。

中国山地の地域が和牛の蔓が多い要因が蛇紋岩と鉄から優良な草資源などとつながっている可能性があると思うと先人の知恵には驚嘆しますね。



月曜日, 1月 18, 2021

糖分ではなく糖度でした

前回、Brixについて糖分としていましたが正確には糖度でした。

Brixは、20度のショ糖液の質量百分率の値で定められており、ショ糖10ℊを含む水溶液100ℊをBrixを屈折計で測定した時はBrix値は10%となります。

正確には、ショ糖以外の糖分も屈折作用があるのでBrix値がそのままショ糖量ではないので注意が必要となります。

ところで牧草の糖度を高めるためにはどうような栽培管理が必要なるでしょうか?

畜産農家では、どうしても栽培する畑には糞尿が投入されています。その糞尿を発酵させているのか生の状態で散布するかで大きく異なります。

原則的には生の糞尿を散布することは不可ですが、まあー難しいことでしょうねえ😞

作物(牧草も含めて)は、窒素(N)と加里(K)は過剰になっても吸収する性質があります。そのために窒素や加里が土壌中に多いかどうかがポイントなるので土壌分析で確認する必要があります。窒素は土壌中での形態で何種類もあるのでわかりにくいのですが、加里は多いか少ないかわかるので草地では、加里が多いとほとんど場合には窒素も多くなる傾向があるので加里を目安にするとよいでしょうね。

また窒素肥料は、尿素よりも硫安(硫酸アンモニア)の方が草地では良いと思います。尿素は、土壌中で分解されて作物に吸収されるまでに硫安よりも時間がかかるのでタイミングは遅くなります。イタリアンライグラスに春先に追肥される方で尿素を使っていると土壌の温度が上がってくると尿素が分解されて吸収されやすくなるタイミングと投入した糞尿が分解されて窒素が吸収されるタイミングがマッチングしやすくなり過剰に吸収されてしまいます。その結果は、草地でイタリアンライグラスが倒伏して葉色が濃くなり黒っぽくなったりします。このような状況になると窒素が過剰吸収されることで糖分が低くなる傾向となり水分含量が高くなります。このような草は、乾燥しにくく、嗜好性も悪く、硝酸態窒素も高く、ミネラルバランスも悪い飼料になります。

経費をかけて作った粗飼料がこんなものなるなら作らない方がいいのではないのかなー

肥培管理では窒素量を肥料と糞尿から推測して適量にするかやや少なめにすることが良質粗飼料になりやすいでしょうね。

適切な肥培管理は土壌中の成分だけでなく実際に草地に生える雑草の種類から判断する必要もあります。



水曜日, 1月 06, 2021

牧草で大事なことは糖分だ

 コロナによる緊急事態宣言が明日(7日)に発出することになったようです。

来週からの予定のキャンセルが来ており自宅待機で資料整理の日々ですな😖

北海道に行く予定も11月から延期になっており何時になるかなー

このような状況ですが心配していた枝肉価格は年明けには下がると思いましたが堅調に推移

しているようですのでよかったです。今後はよくわかりせんが、輸出が好調で推移して欲し

いものです。

ここ3年くらいは牧草(イタリアンやチモシー)について調製されたサイレージ・ロールサイ

レージを給与している牛のコンディション(代謝の状態)やグラスフィッドビーフを調べて

みると牧草についてのポイントは糖含量です。

アメリカでグラスフェッドビーフ(放牧草で肥育された牛肉)の研究している

UnderstandAGのAllen.R.Williaumus(PhD)は、牛を放牧している牧草の糖度(Brix)を測

って牛の超音波によるマーブリング(脂肪交雑)の調査から牧草に十分な糖度がないとマー

ブリングが高くならない傾向があるとしている。

これは牧草に含まれるタンパク質とカロリー(この場合は糖分)関連が重要であることで

す。すなわち糖分はカロリーですので牛が食べた場合にルーメン内で活動する微生物がいか

に効率よく分解できるかにかかっています。

ルーメン内ではタンパク質は微生物によってアンモニアまでに分解されます。このアンモニ

アを微生物が取り込みますが、取り込めないと胃壁より吸収されて血液中に入り体に悪影響

を与えます。アンモニアを微生物に取り込んでもらうためには微生物増殖因子であるカロリ

ーが必要となりるのですが牧草類ではデンプンがほとんどないのでカロリー源は糖分となり

ます。この糖分が十分に残っているかどうかが牛に給与するときにポイントです。

しかしこの糖分は、微生物にとっては大変なごちそうなので誰もが欲しがっているもので

す。そうすると牧草に糖分が十分にあってもサイレージにすると乳酸菌などの嫌気性菌に利

用されてしまいますので、牛が食べる時には糖分が少なくなっている状況です。

そしてサイレージ水分が多いほどタンパク質がルーメンで分解されるスピードが速くなる割

合が高くなるのでそれにマッチングするカロリーが必要となります。しかしカロリーを何に

するかと考えるとデンプンよりも糖分の方が早く利用されるのでもともと牧草がもっている

糖分を有効させるのが一番最適ですよね😁

このバランスを取ること(タンパク質とカロリーの)が上手くいったのがイタリアンロール

を低水分で調製したものでした。(結果論オーライでしたが)

想定したよりも上手くいって繁殖母牛では肥ってしまうようになっています。

このことから乳牛でも牧草の利用性を上手く利用したサイレージ調製のポイントは水分調整

であると思いませんかな?

グラスサイレージは水分を70%以下にして、2次発酵させないように鎮圧を十分にして、糖

分をできるだけ残しておくとでしょう。

ロールサイレージは、水分を40%以下にして発酵させないように調製することで、水分を下

げるためには早刈りしないで最低でも出穂期以降の刈り取りとして、天気予報を注視して、

最後は直観で刈り取りすることでしょうか😙