枝肉のコザシについて
最近の枝肉市場の傾向として”コザシ”が多くなると枝肉単価が上がります。この”コザシ”は、血統の要素が強いとされており但馬系(兵庫系)の牛でないと難しいと思われています。
”コザシ”を増やす方法が血統だけであれば種雄牛を但馬系を使えばいいということになります。しかし血統を変えることは種雄牛だけでなく母方も変える必要があるので簡単ではありません。
体内では脂肪は脂肪細胞の中に溜めこまれてサシ(脂肪交雑:BMS)になります。この脂肪は血液中にある脂肪が血管から吸収されるのですが、この血液中では脂肪は溶けないので移動できません。そこでタンパク質と結合して運ばれます。(牛だけなく人も同じ)このタンパク質と脂肪の複合体をリポタンパクと呼ばれています。血液中のリポタンパクが脂肪細胞で作られて血管の壁に存在するリポプロテインリパーゼ(LPL)という酵素によって分解されてリポプロテインを分解して脂肪を取り出して脂肪細胞に取り込んで貯蔵されます。
この貯蔵された脂肪がサシになるのですが、血液中に脂肪がないといくら脂肪細胞がたくさんあってもサシにはなりません。この脂肪細胞が増えるタイミングが月齢で15ヶ月齢~22ヶ月齢で時に十分な脂肪を供給しないとサシが少なくなります。枝肉成績でBMSが低い牛ではこのタイミングで飼料を十分に食べていないとで影響が出でいます。
またビタミンAのコントロール技術は、ビタミンAを下げることで脂肪細胞を増やすことができるので15ヶ月齢~23ヶ月齢ではビタミンAレベルを下げる飼料給与方法が取られています。
話が難しくなりましたが、この理論が”コザシ”を多くすることに関係しているため説明しました。血液中の脂肪量がないとサシが入らないので脂肪量を安定させて供給するためにはどうした良いかということになります。
配合飼料を食べると血液中の脂肪量が高まります。高まる時間は飼料の内容によりますがおおよそ3時間程度で高まるとされています。脂肪量が高まると前述したように脂肪細胞への取り込みが進みます。しかし肥育用の配合飼料は、穀類(トウモロコシや大麦)が多いのでデンプンがたくさん含まれています。このデンプンがルーメンで分解されるとpHが下がります。ルーメンpHは、6.0~6.5前後が最適とされていますがpHが下がり5.5以下になると微生物が死滅したりして活性が下がり飼料を食べなくなります。
この飼料を食べなくなると血液中の脂肪量が下がりますのでサシの元が減ることになります。
ルーメンpHが6.0近くに戻るまで飼料を食べないケースも観察されますので、牛は空腹になってしまいます。このpHが戻る時間が問題で、十分に稲わらなど繊維質を食べていれば反芻することで唾液がルーメンに入るのでpHが上がりますが、稲わらなどがルーメンに不十分であれば唾液が少ないのでpHが戻りにくくなります。
ルーメンpHが戻るまで時間がかかるほど空腹になるのでpHが戻る時と配合飼料給与のタイミングが重なると牛がガツガツ食べてしまい、またルーメンpHが下がり過ぎるということを繰り返すことになります。このような食べ方をすると血液中の脂肪量が高まったり下がったりを繰り返すことになるので脂肪細胞への脂肪吸収にムラができます。
この血液中の脂肪量と取り込まれる量が”ムラ”になることが”コザシ”でなく”アラザシ”の要因の1つと考えられます。
すなわち”コザシ”を入れるためには、牛にゆっくり食べてもらうような工夫が必要になります。ちなみに兵庫県の肥育牛への配合飼料給与量は、他と比較すると少なくて回数を多くやるという印象があります。(牛の近交係数が高くて虚弱であるという認識が強いこともありますが)
昔から言われている、「大型な牛はアラザシ、小型な牛はコザシ」は、飼料摂取量と食べ方との関連を表現したことではないでしょうか!