牛のこころ、人知らず

日曜日, 2月 07, 2021

鉄と牛

窒素と加里は植物が贅沢吸収してしまうので土壌分析をすると土壌中には少なくあります。そこで土壌分析だけで評価すると施肥する窒素や加里が多くなります。そのために作物のミネラル成分を分析して土壌分析値と合わせて考えることが必要です。

土壌分析で加里が少なく植物のミネラル分析で加里が多いと過剰に吸収している可能性が高くなります。また他のミネラル成分ではカルシウムとマグネシウムもチェックが必要です。これは窒素と加里をたくさん吸収するとカルシウムとマグネシウムを拮抗作用で吸収されにくくなりバランスが悪くなっています。このカルシウムとマグネシウムが少なくて加里が多くなっていると肥料設計の考えてみることです。

ところでカルシウムとマグネシウムが多い米は食味が良いとされています。このバランスの良い米として有名なのが蛇紋岩米です。蛇紋岩はかんらん岩が水と反応と水と反応して蛇紋岩化作用により生成されたものです。かんらん岩はマントルの上部を構成する岩石の1つです。

この蛇紋岩からはマグネシウム(苦土)原料として使われたりニッケルやクロム、石綿の鉱物資源と利用されている。この蛇紋岩は脆くて崩れやすい材質であるために土木工事や掘削工事では難しいとされている。そのために蛇紋岩質がある地域では蛇紋岩由来のマグネシウムの多い粘土が多い土壌が形成されるために米の食味がよくなるのです。この蛇紋岩米の生産地が兵庫県の養父地方になります。兵庫県からの中国山地や岩手県のほか千葉県の嶺岡から三浦半島に大きな分布があります。ミネラルが多い作物が多いところが牛の産地と重なっていることがわかります。

また中国山地はたたら鉄の一大産地でした。中国山地の周辺は砂鉄がたくさん取れたことが生産地の要因の1つですがもう1つ大きな要因があります。

島根県の木次町(現雲南市)に山地酪農を行っている日登牧場に行った時に山を切り開いて日本芝生を植えて造成しているのですが10年くらいで木が生えてくるという話を聞きました。これはたたら鉄には大量の木炭が必要なので当然大量の木材が必要です。中国山地は木材の再生能力が高い地域でもあったわけです。そのために大量のたたら鉄の生産をすることができたのです。

鉄については、微生物の繁殖に重要な役割があります。南氷洋は、栄養分が多い海域で有名ですが鉄が少ないために植物プランクトンが少なくて食物連鎖が起こりにくく漁獲量が少ないのです。ところが瀬戸内海は、漁獲量が面積に比較して多くなっていることから中国山地からの鉄流入が影響しているとされています。(現在は事情が異なっていますが)

このことは、土壌でも起こりうる可能性があり中国山地の木材の生産性も鉄が影響していると思います。(気象条件などの環境要因もありますが)

鉄の生産量が多くなるにつれて日本では鉄製の農機具が発達して開墾が進み生産量が増加して人口が増加したと考えられます。この鉄生産と牛も関連があります。蛇紋岩と鉄により牛に適した草が豊富に取れたことも影響がありますが、もともと日本には牛がいなくて牛は朝鮮半島などから導入されたと云われており現在の牛の遺伝子を調べると欧州型であることもわかっています。鉄を生産した場所は山間地が多いことからたたら鉄の産地から鉄を持ち出すために多くの馬と牛が使われておりこの鉄生産と合わせて牛の改良も行っていたとされています。卜藏家(ぼくらけ)が優良な牛を導入して改良を行い卜藏蔓を作りこの血統が第7糸桜につながっています。

宮崎駿の「もののけ姫」はたたら鉄の物語ですがこれに牛が出てきていますよね。

中国山地の地域が和牛の蔓が多い要因が蛇紋岩と鉄から優良な草資源などとつながっている可能性があると思うと先人の知恵には驚嘆しますね。