牛のこころ、人知らず

土曜日, 1月 07, 2017

肥育前期で増体

高騰した素牛で儲けるためには、高く販売することになります。
しかしBMSが12であっても体型の悪い牛(正肉歩留の悪い牛)では、単価が上がりません。
そこで枝肉重量やBMSだけでなく作りも重要になります。
ではどうすればよいのでしょうか?
前回、タンパク質を給与について問題点を指摘しましたがその他にも牛の仕上がりを見て違和感があります。
タンパク質を高めると牛が大きくなるけど、大きくなる形に問題があります。
それは、体高が高くなり、骨が太くなってしまいます。どちらかというと和牛体型よりもF1のような体型になっています。
このようになれば、バラ、カブリ(僧帽筋)、広背筋が薄くなり、サーロインの部位に厚みがない薄っぺらくなった枝肉になりやすくなります。
このような枝肉は、”引きの長い牛”と呼ばれて肉屋さんには高く評価されないものです。
これらの理由から、肥育前期にタンパク質を高めることはあまり勧めていません。
タンパク質は、筋肉を作るには必要な栄養素ですが、タンパク質を多く給与すれば筋肉が増えるか?
答えは、理論では”その通り”、しかし現実はなかなかうまくいっていないところが多い。
この要因については、別の機会にして、作りのよい大きな牛を作るやり方です。
肥育素牛を導入している場合では、生後月齢が8ヶ月から10ヶ月の牛を市場から買ってきます。
今の子牛市場では、ほとんど子牛が濃厚飼料をたくさん(おそらく7㎏程度)食べてきています。
そうなると子牛が濃厚飼料と粗飼料を食べる量は決まっているので濃厚飼料が多い当然粗飼料が少なくなります。
子牛市場に行くと多くの子牛が軟便で、農家が尻をきれい拭いている光景はよく見ますよね。
すべての子牛がそうであるとは言えませんが、血統と体重で購買する傾向が強い中では、子牛の見極めも難しくなっています。
そこで子牛市場から買ってきた子牛は、粗飼料(粗飼料というより繊維質)を食べていないと考え他方が間違いないでしょうね。
しかし、従来のように飼い直しを長く(3ヶ月程度)すると肥育中期での濃厚飼料の食い込みを高めることが間に合いません。
そこで、いろいろ取り組んだ結果、導入した子牛に1ヶ月間徹底してチモシー乾草1番草かイナワラを1日当たり5㎏食べさせて十分な肋張りを作ることを行います。
農家で「5㎏食べさせる」というとほとんどの方が「無理でしょう」と言われます。
「無理でしょう」を仕方ないと思うかどうすればよいと考えるかの差はものすごく大きなものです。
そこでチモシー乾草かイナワラを5㎏食べさせるためには、濃厚飼料を減らしていきます。
すなわち5㎏食べさせるだけの濃厚飼料を給与することになります。
糸川英夫さんではないですが、逆転の発想です。
そうすると2週間程度で肋張りが一回り大きくなり1ヶ月やると子牛を前から見るとそろばん玉のようになってきます。
こうなると、肥育中期以降に1日12㎏以上の濃厚飼料を摂取することが可能になります。
このことから最近は、導入している子牛の月齢が若いほど腹つくりをやりやすくて大きな牛が作れる確率があります。