牛のこころ、人知らず

日曜日, 3月 14, 2021

乾草がないとどうするのか?

 最近相談がおおくなったのは、輸入乾草であるチモシーの品質が悪くなって牛の食いが悪くなったという相談です。

昨年のアメリカの天候が不順でチモシーだけでなく乾草自体が不作であったために良質なものが少ないことが原因です。

しかし、このようなことは過去もあったので、それにどのように対応できるかが牛飼いの”腕”になりますよね。

黒毛和牛の肥育農家で素牛を子牛市場から導入している農家では、導入してから肥育前期の期間にチモシー乾草の給与をしている牧場が多くあります。チモシー乾草は、繊維質があり、タンパク質とエネルギー(非繊維性炭水化物=糖、デンプン、ペクチンなど)のバランスが取れています。嗜好性も良いので利用されています。

そのチモシー乾草が悪くなると肥育牛の仕上がりが悪くなります。これは肥育前期の粗飼料給与が非常に重要であることを示す例となります。

どうして肥育牛の前期での粗飼料の重要性は、牛の肋張り作りを行うことです。牛の肋張りは、いわゆる体幅を作ることですが体高よりも体の幅が大事な要素です。牛を買うなら肋張りが良い牛を買え!と昔は言われていました。(今はこんなことを言う人はほとんどいませんが)

肋張りが良い(大きい)と何故良い牛の理由は、人も含めて肋骨覆われている部分には肝臓や心臓などの重要な臓器が収まっています。このことから肋張りが良い牛は丈夫で長持ちすることになります。昔は、牛を農耕用に役牛として使っていたので丈夫な牛であることが重要でした。今のように昔は薬や検査ができない時代でしたのでいかに牛を”目利き”できるかが重要でしたので間違いないことでしょうね😲

ところでこの肋張りを出すために乾草が必要なのですがそのの乾草が悪いと肋張りは出来ません。乾草が悪いというのは、1つは嗜好性が悪い(食べない)ので摂取量が不足してしまうことになり、もう1つは繊維の質が悪いことです。繊維の質が悪いということは繊維の硬さが少ないことです。繊維が少ないことと軟らかいことは似ていますが少し違う点があります。繊維が少ないのは、硬い草であっても草を畑で乾燥させるために草を撹拌(テッタをかける)する回数が多くなると繊維を壊してしまいます。壊れた繊維は牛が食べる時に咀嚼回数が少なくなるので同じ量を与えても”繊維が少ない”状態になります。当然軟らかいと咀嚼回数が少なくて嚥下できるので同じような状態になります。

繊維が多い草と繊維が少ない草を化学分析を行うと数値の差がほとんど出ないのです。これは化学分析をするときに粉砕して機械にかけるので牛の反応と異なるのです。この点は牛舎で繊維を確認(実際に触って)して牛を良く見る(行動や動作から)ことをする必要があるのです。

肋張りを出すためには繊維を多いものが必要ですので、最初のテーマに戻ると咀嚼が十分にできる繊維を草を与えることです。

コンサルで行う方法の1つとしては、稲わら給与になります。ただ稲わらだけだとタンパク質やミネラル、ビタミンが少ないので補給としてルーサンペレットやヘイキューブの給与が必要です。実際に稲わらだけでは、タンパク質不足によりルーメン微生物の繊維分解能力が低下して糞が硬くなり便秘なったりひどい場合は第4胃に未分解の稲わらが詰まってしまうような例があります。

稲わらを上手に使うことで対応可能ですが、もちろん稲わらと一括りではなく品質も大事な点です。