牛のこころ、人知らず

日曜日, 8月 30, 2009

タンパク質の種類について

京都府立大学と京都府立総合研究所などが米の食味について興味深い発表をしています。
米の美味しさに関わる要因といsて、タンパク質の1種プロラミンが米の表面にどれだけ蓄積されているかで左右されるというものです。
プロラミンは食味を落とす原因であることはわかっていたのですが、米粒の中でどのように分布して食味に影響しているかはわからなかったのですが、京都府立大学のグループではプロラミンを染色して「コシヒカリ」と食味の落ちるほかの品種との違いを調べた結果、食味が落ちる品種はプロラミンが全体に多いのであるが、特に表面に蓄積されていることがわかった。
このプロラミンは、水をはじく性質があり表面に多いと内部まで水が浸透しないために炊き上がりがふっくらとしない原因になる。
これは、栽培後期の窒素の施肥量が多いとプロラミンが表面に多くなることなります。

このプロラミンは(Prolamin)、イネ科植物に含まれるタンパク質の1種で、アルコールに可溶性のタンパク質で、とうもろこしではゼイン(Zein)と呼ばれています。
このプロラミンを牛で調査をウィスコンシン大学のグループが研究を行なっています。
今年の1月のDairy Sience のテクニカルノートにありますが、このプロラミンは水を嫌うためにルーメン内でのでんぷん分解にマイナスになります。
すなわち、プロラミンが多いとでんぷんの分解が低下すると言うことは知られていることです。
とうもろこし」のゼインについては定量方法が大変面倒で手間がかかるので分析されることはほとんどなかったのですが、ウィスコンシン大学のグループでは新たな分析方法で定量しています。
その結果は、ゼイン含量は、ハイモイスチャー、フラワリー、オーペクがフリント、デントドライコーンのゼイン含量に比べて少なくなっていました。
この研究はまだまだですが、全体から見るとかなり細かいことで実際の生産性に与える影響は低いのかもしれませんが、デントコーンでゼイン含量が高いので、今後デントコーンの品種ではゼイン含量が多い少ないが栽培品種の選定基準の1つになるかもしれません。

日曜日, 8月 23, 2009

摩訶不思議ルーメンの世界

今年の夏はあまり高温多湿状況ではなく過ごせそうですが、一方では飼料作物の不作となり天候に左右される農業の典型的な一面を表しています。
今年は、自給飼料の量と品質が悪いので、1年間の飼養管理の「腕」が必要になると思われます。
このような時には、調子の悪い牛が多くなるのでコンサルタントも忙しくなるのですが、根本的な粗飼料が悪いとなかなか上手くいかないのも事実です。
このようなときには、あまり無理をしないで少し生産性を下げて、コストと牛の維持をすることが1番ですが、それすらできなくて四苦八苦する現場が多くなります。
しかし、まだ収穫作業が終わったわけではないので、今後の天候に期待したいと思います。

夏場に乾物摂取量が低下するために、牛の調子が悪くなることを防止する対策として、植物ステロールの給与を今年も試験的にやっていますが、結構好調で今のところ乾物摂取量は低下しないでこの夏を乗り切れそうです。この植物ステロールについて、ルーメンへの投与(フィステル牛で)したところ、1回だけではルーメン性状には大きな変化が見られなくて、結果は??でした。
試験方法の問題もありますが、ルーメン性状をpHが下げておいて投与しなかったので、差が出なかったかもしれませんが、ルーメン内でステロールがバクテリアにどのように取り込まれるか、摂食されるかについてはよくわかっていないので、もう少しラボレベル(試験管培養)で確認する必要がありそうです。

同様に、肉牛での米油給与により牛肉中のオレイン酸を高めることについてはルーメン内での不飽和脂肪酸は、その多くが水素添加をされて飽和化されるのですが、ルーメン内で水素添加は、不飽和脂肪酸がルーメン内の飼料片にくっついていると水素添加をされやすいのですが、この飼料片がない状態であれば水素添加を受ける割合が少なくなります。
この割合は、リノール酸では、約80%が微細な飼料片で水素添加されている報告があります。
ルーメン内での水素添加は、飼料片に付着しているか、ルーメン上清に浮遊している主に繊維分解菌によって行われることが明らかになっている。
飼料片がないと、微生物が脂質に覆われるか、不飽和脂肪酸に阻害されることと考えられています。
そのために、ルーメンをバイパスしている不飽和脂肪酸がある程度ある可能性がありそれが、脂肪酸組成に影響を与えている可能性もあり、特に肥育牛のように粗飼料が少ない場合には、顕著に現れるのではないかと考えています。

といことは、ルーメン内で不飽和脂肪酸を水素添加させないと牛乳中の脂肪酸組成も変えることができるのか?
これは、共役リノール酸やトランス脂肪酸に向かうことになるのですが、ルーメンでの脂肪利用については、まだまだわからんですなー