牛のこころ、人知らず

日曜日, 9月 21, 2008

微生物に幸せを

ルーメン微生物の活性力を高める物質としての植物ステロールですが、理論的なことはわからなかった時にもすでに利用していたこともわかっています。
それは、以前書きましたが、クズやヤマハギなどの野草類にも多く含まれているのです。
これらは、牛が食滞気味になったり夏バテになったら食べさせるということを行なっていました。
今でも行なっていますが、その理由の1つとして植物ステロールが多く含まれていると思われます。
クズやヤマハギは、マメ科の植物で、クズは昔 「King of grass」と呼ばれており、ヤマハギはアメリカでは 「Bush clover」と呼ばれています。
特にクズについては、最近の耕作放棄地などに牛を放牧利用させるときには、クズを1番に食べつくします。
現場の牛へのコンサルするときには、夏バテ気味の牛には、クズを刈ってきて食わせなさいと言っています。これは、飼料コストの高騰の時期に、クズは荒地や土手などに生え放題になっており、それを刈り払って捨てるという作業を経費をかけて行なっているのですから、これをタダでもらってきて牛にやれば一石二鳥になるからです。
しかし、そのアドバイスをして実際に行なう人は、10人に1人くらいでしょうかね!
作業も大変なのでやらないと思うのですが、本当はクズを食べさせる効果を認めていないのかもしれません。

この植物ステロールですが、ステロールの含む脂肪は、その原料にもよりますが、微生物活性に非常に効果があります。
例えば、米油などは、漬物屋さんが、漬物をするときに使っているそうです。
今の糠床に使う米糠のほとんどは脱脂された脱脂米糠ですが、これだけでは旨み(味)が出にくく、そのために脱脂糠に米油を混ぜたものを使うとまろやかな旨みのあるようになるそうです。

米糠は、精米したときに出てきますが、生米糠の状態であれば約20%程度脂肪分ですがこの脂肪がリパーゼという酵素の働きで酸化してしまいます。
そこで、品質を安定させて流通させるために脂肪を取り除き、脱脂米糠として使っています。
脂肪分は、食品用として米油として販売になります。

昔の人は、理屈は別にしていろいろな効果をよくわかっていたのでしょうね!

日曜日, 9月 14, 2008

牛の喜びは虫の喜びか?-パート3-

しばらくぶりの書き込みです。
忙しいという言い訳?ですね!

続きになりますが、脂肪と言っても牛のルーメンの場合には、脂肪が多くなると基本的にルーメン内の微生物の活性が低下してしまいますから、あまり多く給与するとマイナスになることもわかっています。

しかし、なぜ牧草ではこの脂肪が嗜好性(言い換えると食べるor食べない)に影響しているのでしょうか?
それは、脂肪と言ってもいろいろな成分の総称になります。
もう少しわかりやすく説明すると、
石鹸を作るときには、油をナトリウムなどに化合させるのですが、そのときの固まる成分を鹸化物と呼ばれています。そして固まらない成分を不鹸化物と区分しています。
この不鹸化物の成分は、ビタミンAやビタミンEなどの脂溶性ビタミン類が多く含まれています。

実は、この不鹸化物の中にルーメン微生物の活性成分があるのです。
これは、明治大学の高橋先生のグループが見つけたものですが、この成分でルーメン微生物を培養すると活性化してガスの発生量が多くなることを確認しています。
この成分は、不鹸化物に含まれる植物性ステロールであることをわかっています。
すなわち、植物ステロールが多く含まれるものは、ルーメン微生物を活性化させて乾物摂取量を増やすことができるものです。
これについては、今年夏にげんちでの給与試験を行なっていますが、途中経過では農家間での差があるので一概に結論できませんが、夏場に乾物摂取量が低下しないで、乳量も維持でき事例も出てきています。
しかし、この原料は液状(粘性のある)でかつ高価なものですから、実用性があるかどうかはその費用効果とよく検証しないといけないと思っています。

一方牧草などでは、この植物ステロールを調べれば、その品種の嗜好性が高い可能性があるので今後の品種改良などには期待がもてると思います。