牛のこころ、人知らず

月曜日, 4月 30, 2007

稲わらでは?

粗飼料を考えると、反芻材料であることが最低条件になるが、反芻ばかりさせると、牛乳の生産性が上がらないという結果になります。
これが、牛を健康に飼うことと経営として牛乳生産をしている場合にバランスが崩れてしまうことがあります。
特に牛乳生産量を多くしたいと考えていけば、当然栄養供給を増やしていくことになりますが、そこで配合飼料のようなものだけを多くしてしまうと、健康を維持すべき粗飼料が不足しがちになり、問題が生じてきます。
ある事例ですが、25頭くらいの酪農家へ行ったら、乳量が35kg/1頭当り出ており非常に調子のよい(牛も健康状態がよい)ところでした。
ところが、しばらくして行くと、牛に元気がなく調子が悪くなっていまいした。
「どうして悪くなった?」とたずねると、農協指導で「稲わらのような栄養のないものをやるとだめだ」といわれたので、代わりにアルファルファの乾草にしたとのことでした。
そうすると、乳量は減って、軟便になり、乳房炎が発生して、困っているとのことでした。
その酪農家も、稲わらをやってもよいかの悪いかの質問されたのですが、今まで稲わらをやっていて調子がよかったのだから、元に戻したら方がよいとアドバイスして、元に戻すと調子がよくなったとのことでした。
最近の輸入乾牧草の高騰から、もう少し稲わらを有効に利用するといいでしょうね!
ちなみにこの酪農家では、1日に1頭当り2.5kg程度の稲わらを10cmくらいに切ってやっていました。

粗飼料は草のこと?

粗飼料と分類しているのは、牛の都合よりも人の勝手に分けていることかも知れませんが、「粗飼料とは何ですか?」と聞かれるとどう答えたらよいでしょうか?
英語では、FORAGEというのが日本での「粗飼料」に値すると思うのですが、このFORAGEの中に、HAY、SAILAGEが含まれていることになります。
「粗飼料」も乾草・サイレージが含まれていますが、これらのことを、以前は「粗繊維」と置き換えた言い方であったここがあります。
今も、同じ意味で使っている場面がありますが、「粗繊維」という大きな分類ではなく、より細かい科学分析により、繊維分の評価が変わってきたためにより「粗飼料」が曖昧なことになってきたような気がしています。
繊維分の分類から評価すると、乾草でなくても「粗飼料」としては、ビートパルプやヘイキューブ、ふすま、豆皮なども繊維分が多いもので、乾草などの代替になります。
これらのものを、ルーメンでの分解試験を行なうと、それぞれで多少結果は異なりますが、個人的な分類では、「粗飼料」と「濃厚飼料」の中間的な感じです。
中間的とは、「粗飼料」として半分、「濃厚飼料」で半分として見るのが妥当ではないかと思います。
「濃厚飼料」よりは、ルーメンに負担はかけないが、「粗飼料」のようにルーメンpHを安定はさせにくいというものですので、牛が乾物量が不足している場合などに不足分を補うように給与するのがベストだと考えています。
「粗飼料」とは、現場では、あくまでも牛が充分に反芻することができるものというのが基本であると思っていますので、「反芻が充分にできるもの」が「粗飼料」だと考えています。
そのために、例え栄養価が低くても「稲わら」などは反芻材料としては、日本ではもっとも適した原料で、実際に「稲わら」を給与して状態がよい牛群があるのも事実です。

土曜日, 4月 28, 2007

粗飼料とは

最近、ある本を読んでいたら、粗飼料とは、「粗末な飼料」のことだと書いてありました。
粗飼料の「粗」は、「粗末」ではなく「粗い:あらい」という意味である思っていましたから、何か新鮮な
気持ちになりました。
たしかに、最近の粗飼料はかなり「粗末」なものが多いのが実態であることも間違いないからです。
特に、輸入されている乾牧草は、ここの円相場と中国・韓国などの買い付け増加、日本国内でのポジティブリストの関係で高騰しており、それに追い討ちをかけるようにオーストラリアの旱魃によりオーストラリア産のえん麦乾草(オーツヘイと呼ばれています)が少なくなったことも重なって、配合飼料よりも高い価格になっています。
そして、酪農家では生産調整の減産、配合飼料の高騰(バイオエタノールの増産とオーストラリアの旱魃による小麦の輸入国になったこと)で生産コストが高くなり、牛乳販売価格の値下げで収支が厳しくなって来ているために、生産コストを下げなければならない状況になってきています。
そこで、配合飼料は値上げの基金での補填がされるのでまだいいのですが、乾牧草では高くなった分だけコストを吸収できなくなってきて、どうしても価格の安いものになりがちになっています。
そうすると、安いと品質が悪くなってきますので、当然牛によい影響を与えるものにはならなくなります。
そうすると、食べなくなって、ルーメンの恒常性が維持できなくなってくるとさまざまな病気がでてきますので結局、儲からなくなっていきます。
儲からないと、またコストを下げざる得ないのでまた品質の悪い乾牧草になるといった悪循環にはまっている農家もあります。
これらの粗飼料は、それこそ「粗末な飼料」になり、決して牛によい影響を与えないことになります。
ちなみに、この本では、「粗飼料」ではなく「素飼料」がほんとうの呼び方であると述べてありました。
「素」はもとになるという意味で、牛の基本であるということのようです。