牛のこころ、人知らず

月曜日, 1月 09, 2017

肥育素牛を導入して1ヶ月間徹底した乾草(繊維分)給与によって肋張り、食い込みの高い牛に変えることでした。 乾草(チモシー1番菅草orイナワラ)が5㎏給与で濃厚飼料は1-2㎏になります。 このようなにすると牛が小さくなり肥育できないと言われます。 確かに肋張りはよくなりますが、痩せてくるので、この時点だけで判断すると牛が大きくならないと思われます。 しかし、本当に牛が大きくなっていないのか? というわけではありません。 これは、購入した素牛の余分な脂肪がなくなっているためで本来の形に戻っていると表現した方がよいと思います。 牛を正面から見るとブリスケがネクタイのように見えるとこれは、皮下脂肪が付きすぎている状態です。 この状態を横から見ると胸ヒレのようになっている牛は、牛が小さくても脂肪が内臓にもたくさん持っています。 これらの牛は、昔の表現では「水っぽい牛」になります。すなわち筋肉では、脂肪肥りの牛です。 実際は、多くの牛(肉牛だけでなく乳牛も)は、水っぽい状態になっているために筋肉の少なくなっています。 なぜそうなるのでしょうか? 栄養学では、肌肉を作るものはタンパク質から作られます。そのためにタンパク質を給与すると筋肉ができますが牛の場合(反芻動物の場合)は、ルーメン機能があるので複雑になります。 牛が食べたタンパク質の多くは、ルーメンで分解されてアンモニアになります。分解を受けないタンパク質は、そのまま小腸で酵素による分解を受けて吸収されます。 問題は、アンモニアになるタンパク質がルーメン微生物に取り込まれて微生物タンパク質に合成されると菌体タンパク質となります。この菌体タンパク質がルーメンから小腸に移行すると酵素分解されて吸収されます。この流れが問題なく進めばよいのでしょうが、アンモニアが微生物に取り込まれなくなるとアンモニアがルーメン壁より吸収されてしまい血中濃度が高くなります。 アンモニアは、有毒なので早急に解毒をする必要から肝臓による解毒が行われて腎臓から尿酸で排出されます。 そうなると食べたタンパク質は、無駄になり筋肉になることはありません。 そのために給与するタンパク質とデンプンの割合が取れていないとが原因となっています。この割合は、肉牛と乳牛では異なりますがこの割合をバランスよく取ると、乳牛でも飼料中のタンパク質を少なくしても乳量(日量3よりも0㎏以上)を維持できます。 この理由からタンパク質だけを高めて給与すると思ったよりも効果が上がらないことがあります。

土曜日, 1月 07, 2017

肥育前期で増体

高騰した素牛で儲けるためには、高く販売することになります。
しかしBMSが12であっても体型の悪い牛(正肉歩留の悪い牛)では、単価が上がりません。
そこで枝肉重量やBMSだけでなく作りも重要になります。
ではどうすればよいのでしょうか?
前回、タンパク質を給与について問題点を指摘しましたがその他にも牛の仕上がりを見て違和感があります。
タンパク質を高めると牛が大きくなるけど、大きくなる形に問題があります。
それは、体高が高くなり、骨が太くなってしまいます。どちらかというと和牛体型よりもF1のような体型になっています。
このようになれば、バラ、カブリ(僧帽筋)、広背筋が薄くなり、サーロインの部位に厚みがない薄っぺらくなった枝肉になりやすくなります。
このような枝肉は、”引きの長い牛”と呼ばれて肉屋さんには高く評価されないものです。
これらの理由から、肥育前期にタンパク質を高めることはあまり勧めていません。
タンパク質は、筋肉を作るには必要な栄養素ですが、タンパク質を多く給与すれば筋肉が増えるか?
答えは、理論では”その通り”、しかし現実はなかなかうまくいっていないところが多い。
この要因については、別の機会にして、作りのよい大きな牛を作るやり方です。
肥育素牛を導入している場合では、生後月齢が8ヶ月から10ヶ月の牛を市場から買ってきます。
今の子牛市場では、ほとんど子牛が濃厚飼料をたくさん(おそらく7㎏程度)食べてきています。
そうなると子牛が濃厚飼料と粗飼料を食べる量は決まっているので濃厚飼料が多い当然粗飼料が少なくなります。
子牛市場に行くと多くの子牛が軟便で、農家が尻をきれい拭いている光景はよく見ますよね。
すべての子牛がそうであるとは言えませんが、血統と体重で購買する傾向が強い中では、子牛の見極めも難しくなっています。
そこで子牛市場から買ってきた子牛は、粗飼料(粗飼料というより繊維質)を食べていないと考え他方が間違いないでしょうね。
しかし、従来のように飼い直しを長く(3ヶ月程度)すると肥育中期での濃厚飼料の食い込みを高めることが間に合いません。
そこで、いろいろ取り組んだ結果、導入した子牛に1ヶ月間徹底してチモシー乾草1番草かイナワラを1日当たり5㎏食べさせて十分な肋張りを作ることを行います。
農家で「5㎏食べさせる」というとほとんどの方が「無理でしょう」と言われます。
「無理でしょう」を仕方ないと思うかどうすればよいと考えるかの差はものすごく大きなものです。
そこでチモシー乾草かイナワラを5㎏食べさせるためには、濃厚飼料を減らしていきます。
すなわち5㎏食べさせるだけの濃厚飼料を給与することになります。
糸川英夫さんではないですが、逆転の発想です。
そうすると2週間程度で肋張りが一回り大きくなり1ヶ月やると子牛を前から見るとそろばん玉のようになってきます。
こうなると、肥育中期以降に1日12㎏以上の濃厚飼料を摂取することが可能になります。
このことから最近は、導入している子牛の月齢が若いほど腹つくりをやりやすくて大きな牛が作れる確率があります。






木曜日, 1月 05, 2017

素牛高騰(肉牛)

新年明けましておめでとうございます。
約1年ぶりの投稿です。
この1年は、カルシウムの焼成技術に没頭していたようなものでようやく完成に近づいてきました。
この冬も鳥インフルエンザが多く発生しており、今後も増える可能性があるので心配です。
多くの養鶏農場は、徹底した管理をしていますが、ウイルスは飛散するので野鳥経由の感染を
防ぐには人の防除が重要でしょう。
鳥インフルエンザへの焼成カルシウムの効果は高く粉末でも溶解した水溶液でも殺滅効果があります。これに付随して消臭効果もあるので畜舎(家畜全般)への噴霧も期待できます。
取り組みとしては、寒冷地での哺育舎での消臭殺菌のも試験を予定しています。
畜産ではないのですが、殺菌・消臭効果が高いことからペットの利用も検討されています。
本業である肉牛や乳牛では、素牛価格が高騰して黒毛和牛の去勢子牛が100万円が当たり前になり、乳牛の初妊牛も100万円を超えて異常な状況になっています。
このような価格になると肥育ではできるだけ枝肉重量を多くすることになります。一方枝肉価格は、高値で推移しているものいまでも量販店での販売が伸び悩みでこれ以上の価格になると消費向けが減退する可能性がります。そのためにこれ以上の枝肉価格は望めないと考えた方がよいでしょう。
そのなると以下に肥育牛を大きくするかが課題となります。
しかし、東京食肉市場(芝浦)は、買参が正肉歩留の高いものを求めており枝肉の作りが悪いものは価格が伸び悩む傾向です。同じ格付でも単価で200円程度の差が出てしまします。
そのためにただ大きくするだけでなく、正肉歩留の高い牛を作る必要があります。
いわゆる詰まった、深みのある牛を作るためには、どうしたらよいのでしょうか?
大きな牛を作るためには、肥育前期にタンパク質を補給するとよいと言われています。
小さな素牛(生後8ヶ月齢で200㎏程度)を用いて試験をすると思ったように大きくなりません。
タンパク質補給として大豆粕ミール(脱脂)や加熱大豆をやると1頭飼いではよいのですが多頭飼いでは食べ過ぎる牛と食べれない牛ができてしまします。そのすると食べ過ぎた牛は、タンパク質が過剰になり軟便になりやすくなり飼料効率が低下します。
配合飼料のように完全に混合されていればよいのですが、配合飼料に添加するものはきれいに混ざらないことと強い牛が先に食べしまいやすくなります。
理論的には、発育にはタンパク質が必要ですが安易にやると効果がマイナスになることも考慮が必要です。
タンパク質を補給しないで牛を大きくする方法は、どうするのかはいろいろ考えて試行錯誤して試験をした結果は実は簡単なことでした。