牛のこころ、人知らず

土曜日, 1月 31, 2009

糞の利用方法

北里大学竹原先生のグループが鶏糞の新たな利用方法を提案されています。
これは、直接にお関係はないのですが、最近「里山ビジネスモデル」作りに参画することになり
その一連で関わることになってしまいました。
これは、鶏糞をセラミックにすることで、吸着力が出てきて細菌やウィルスを不活性化させることができるようです。
これを鶏に5%混合したエサを給与しても増体などには影響がなかったという報告をしています。
結果このセラミックを鶏舎周辺、鶏舎内、エサといなどに撒くことでバイオセキュリティを強化できると資材であるということです。
特に、鶏ではインフルエンザに対して異常にまでに注意をしていますので注目されています。
ところで、この話を聞いて考えたのですが、セラミック資材を土壌に使えば土壌中の病害虫の対策になるのではないかと提案しました。
このセラミックの効果が吸着させることであれば、土壌中の線虫やフザリウム菌やウィルスなども同様に不活性化できるのであれば、あまり農薬などを使わないで作物栽培ができるのではないかと考察しています。
そうすると土壌に対策になれば、処理に困っている鶏糞はセラミックにして土壌資材にすれば養鶏屋さんも畑をやっている耕作農家にも喜ばれると思いませんか?

その後よく考えてみると、今コンサルしている繁殖一貫経営の農家でコクシジウムに困っているのですが、なかなかコントロールすることが難しい状況なのですが、このセラミックを子牛の牛舎に敷き詰めていけばコクシジウムが不活性化してくれれば大いに助かるのかな?などと思っています。
具体的なことはこれから試験をしていく必要があるので今から関係機関と取り組むことになりますが、現地での実証試験と並行していくことで早く結果を出せたらよいと昨日も打合せをしたところです。
ところで、鶏糞で出来れば牛糞ではどうでしょうかね?
今度聞いてみよっと!

金曜日, 1月 16, 2009

続々・最近の肉牛の話題

実際にイナワラのビタミンA含量を測定すると、これは地元産のイナワラでしたが、平成19年度産(おととしのもの)と平成20年度産(去年のもの新ワラです)では、19年度産で204IU/kg、20年度産で1,570IU/kgでした。(現物中の数値)
日本標準飼料成分表(2001年版)では、イナワラのビタミンA(実際はβ‐カロテン含量ですが)は0~3,700IU/kgの値が載っています。
ちなみにチモシー乾草では、4,000IU/kgが平均値のようです。
これらは、イナワラの品質によって大きく変わりますが、少なくともイナワラは、昔から言われているように、冬越ししたものを使う工夫が必要なのでしょうね。

飼料の分析値だけを見ると繊維分は、麦わらもイナワラも変わりがありません。
日本標準飼料成分表からワラ類の繊維分を比較すると、下のようになります。


             ADF (DM%)   NDF (DM%)  CF 消化率(%)
イナワラ (水稲)     39.2         63.1          57
小麦ワラ          46.5         70.2          58
大麦ワラ          47.9         74.9          57


この数値からだと、イナワラよりも小麦、大麦の方が繊維分は多くなっていますが、イナワラを食べた牛と小麦ワラを食べた牛の違いは、見た目ではっきりわかります。
イナワラを食べた肥育牛は、正面から見ると四角く見えますが、小麦ワラ食べた肥育牛は、正面から見ると金魚腹のように見えます。(書いて表現するのは難しいです)
これは、繊維分が不足している状態かあるいは、食べているエサ全体の消化管を通過する時間が早いために起こっている現象です。
実際に牛舎に行く、配合飼料はたくさん食べているのに思ったほど、枝肉重量がないのは、このようなことが理由の1つになっていることが多いのです。
特に最近の黒毛和牛の血統は、平茂勝から大型化が進み枝肉重量を取ることが重要視されていることから、たくさん食べさせないと大きくならないし、「サシ」も入ないといことがわかってきましたので、昔のように大麦などできつい配合飼料でつめていくような資質系の飼い方から大きく変わってきているのです。
いかにたくさん食べさせるかが、大型血統牛のキーポイントになってきています。
そのためには、イナワラの品質がより重要になってきているのでしょうね!

月曜日, 1月 12, 2009

続・最近の肉牛の話題

前回の続きですが、イナワラがらみの話題をもう1つあります。
それは、イナワラといってもいろいろあるという話です。
イナワラといえば、どれもみな同じだという思われがちですが、かなり品物によって差があります。
この差は、前回のβ―カロチンもそうですが、今回は早生と晩生の問題です。
実は、イナワラを食べさせてもおもったよりも繊維分が少ない場合があるということです。
イナワラは、栄養分よりも繊維分を補給するために利用しているのですが、早生品種のイネでは繊維分が少ないことがあります。
これは、米作りをしているとわかるのですが、米作りでは、米とワラが大体同じだけ取れるのです。そのために、早生は米の収量が少ないのでワラも少なくなります。
一方、晩生品種のイネでは、米の収量も多いためにワラもたくさん取れます。
この話だけでは、ワラの収量の問題だけですが、早生と晩生の違いは含まれる繊維量も違うのです。
コシヒカリはいい例ですが、早生は比較的倒伏に弱いことが知られています。これは、繊維分の中にリグニンが少ないためで、晩生はリグニンが多く倒伏に強い傾向があります。
なぜこのようなことが分かってきたかといえば、最近の黒毛和牛は非常に大型化してきて枝肉重量が600kgを越えるものも少なくありません。もちろんホルスタインや交雑種(F1)よりも大きくなっています。(食肉市場に行くとよくわかります)
そのために、牛サイドからはたくさんのエサ(配合飼料)を食べる必要があります。そうすると農家は配合飼料をたくさん食べさせるのですが、イナワラは、ほとんどの農家で今まで通りの量です。
そうすると、ルーメンのpHが下がった状態(アシドーシス)が続いてしまい、人でいう「胃潰瘍」のような状態になってルーメン内壁が白くなり、柔毛の機能がなくなり、ひどくなるとルーメンが硬くなりひび割れを起こします。
こうなると肥育どこではなく、生命維持の危機になります。
ここまでひどくならなくても、繊維不足ではルーメンの厚みがなくなり、柔毛が細かいものから爪くらのものに変わってしまい、肥育がうまくいかなくなってしまします。
ルーメンの厚みがなくなると、美味しい「ミノ」を食べることが出来ません。
その防止のためには、丈夫なルーメンを維持しなければならないのですが、早生のイナワラでは繊維分が少ないのでたくさん食べさせないといけませんが、イナワラをたくさん食べると配合飼料の量が減るので牛の肥りが悪くなります。
イナワラに繊維分があれば、このような状況を防ぐことができるのですが、イナワラをみな同じと考えているとちょっとした落とし穴があります。
また、子牛段階で粗飼料を十分に与えられていない子牛も大きさだけでなくルーメンの厚みも不足しているので、十分な注意が必要です。
ちなみに、全共でチャンピオン経験のある茨城の長島さんと話したときには、「イナワラは絶対晩生でないと駄目だ!」と言っていました。

土曜日, 1月 10, 2009

最近の肉牛の話題

最近ですが、肉牛に関して現場で問題になった話題を紹介します。

黒毛和牛肥育牛に食べさせるイナワラのことです。
肥育では、イナワラを大体1~1.5kg程度肥育牛は食べますが、最近は「サシを入れるために」(霜降りの肉つくりです)ビタミンAのコントロールをすることが常識になっています。
イナワラを食べさせるのも通常の乾草などよりビタミンA含量が少ないことから使われているのですが、以外にイナワラのビタミンA含量が高い物があることがわかりました。
イナワラに含まれているのは、ビタミンAではなくβ―カロチンです。
β―カロチンを摂取するとビタミンAに変わるのですが、イナワラが緑色(あるいは黄緑色)のものには比較的多く含まれています。
そのために、肥育を始めた初期段階では、ビタミンAのレベルを下げるようにするのですが、このようなβ―カロチンの多いイナワラをやると血中のビタミンAが減らずに逆に増えてしまうケースがあります。
そのためにビタミンAレベルが低下することで「サシ」がロース芯に入るのですが、低下しなくて逆に増えると「サシ」が入らないことになります。
そのために枝肉になった時に格付が悪くなり、価格が安くなってしまいます。
これは、イナワラに含まれるβ―カロチンレベルもありますが、ビタミンA換算で300IU以上になると危険だと考えています。
イナワラではないのですが、乾草はもっと多く含まれていますが、子牛市場から導入した際にいわゆる「飼直し」をするのに良質乾草としてチモシーを使いますが、これも品質(グレード)の高いものにはβ―カロチンが含まれているので、あまり長く給与してしまうとビタミンAが下がりにくくなり「サシ」が入らないことになります。
チモシーだけではなくオーツヘイなどの品質のよい(緑色がある)乾草でも同様なことが起きてしまいます。

最近ロース芯の「サシ」が甘いと感じている肥育農家の方は、一度チェックしてみて下さい。

日曜日, 1月 04, 2009

明けましておめでとうございます

新年あけましてあめでとうございます。
今年は、東京はよい天気に恵まれて穏やかな正月でした。
初詣に行きましたが、お参りするまで1時間並んでいました。
地元の氏神様は、直ぐでしたが出かけついでに大きな神社に行くことにしたのですが大変な人でした。
1時間待ちの間、娘が着物で行ったのですが、かなり寒い思いをしたようでした。

今年は、丑年で牛に関わる仕事をしているものとしては、良い年になって欲しいという願望が強いのですが、なかなか厳しいのが現実になりそうです。
しかし、愚痴を言ったり、世の中が悪いと言っても、乗り越えていかなければいけないことで諦めたら牛飼いから足を洗うことになりますので「頑張ろう」ということになります。

昨年より話題になっていることでは、「鳥インフルエンザ」がありますが、最近の研究でダチョウを使った免疫システムを作り、それからインフルエンザ用「抗体マスク」を紹介されていました。
これは、「鳥インフルエンザ」を無毒化ワクチンとして作り、これをダチョウに注射して、ダチョウの卵の卵黄のタンパク質から抗体を取り出して利用するというものです。
実際に、インフルエンザ用の抗体マスクの効果は非常に高いということです。
これらは、今後直接鳥に対して投与をして効果があるかどうかを確認しているようですが、大変興味深い仕組みです。
これと同じようなことを、牛に対して行なえないかと発想しているのですが、牛ではすでに「スターリミルク」として販売されています。
これも無毒化した26種類のワクチンを牛に接種してミルク抗体であるIgGをたくさん含んだ牛乳を作るという技術です。
製品化されて、「免疫ミルク」「スターリミルク」として販売されています。
このような技術を使って牛乳をより効果的なものにすることも可能ですが、日本の場合には「乳等省令法」という法律がありなかなか作れないという壁があるのです。
過去取り組んだ例もあるようですが、この法律により断念しているようです。