牛のこころ、人知らず

日曜日, 9月 30, 2007

続・日本畜産学会にいきました

学会でのシンポジウムで興味ある話題が、東北大学の斉藤教授の乳酸菌でした。
今は、乳業界では唯一販売が好調な商品である「ヨーグルト」の開発についてのことでした。
面白い話題は、血液型別に乳酸菌が開発されそうであるということです。
これは、O型の血液型の人が特異的にその腸管内で付着しやすい菌とそうでない菌がおり、同じ乳酸菌でもその効果が異なることがわかってきたそうです。
そのために、血液型別に調べていくとそれぞれに付着する能力が異なるので、将来は同じヨーグルトでもA型用、B型用、O型用、AB型用と使い分けされるようになるかもしれないということです。
ふと考えると、乳酸菌製剤を子牛などに給与すると効果のある牛とない牛がいますから、牛にも同じようなことが起きているのかもしれませんが、家畜用にまで商品開発することはもう少し時間が必要ですし、実際に牛の血液型を皆さん知っていますか?
でも面白い話題です。
また、学術発表では、醤油粕の利用の話題で、最近の醤油粕は脂肪が従来よりも多くなっており、飼養標準より約2倍程度含まれてきているそうです。
これは、商品として「丸大豆」を使ったものが増えて来たので、その影響で増えているようです。
そうなると、おからと同じく脂肪量が多いと夏場などの粗飼料が摂取されない場面では、醤油粕の給与量が多くなると、乳脂肪が低下する懸念がありますので、特に夏場に使う醤油粕の脂肪量をチェックしておく必要があるでしょうね。

金曜日, 9月 28, 2007

日本畜産学会に行きました

26~27日で日本畜産学会に行きました。
場所は、岡山大学で開催されました。
今回は、シンポジウムで吉田全作さんの講演もあるので参加しました。
吉田さんは、岡山県の中央部でチーズ作りをしている酪農家兼チーズ職人という方で、私も10年来の付き合いがあり、テレビなどでもよく出ています。
たしかに、チーズはおいしいのですが、作る量は自分のところで搾乳した分でしか作らないのでなかなか入手することが難しいチーズです。
その吉田さんとは、放牧地を造成してからお付き合いが本格的になったのですが、それまではいわゆる舎飼いの牛飼いでしたが、放牧地を作って搾乳時以外は放牧地へ牛を出している形に変わりました。それで、今まで病気が多かった牛もほとんど病気にならなくなって来て講演後久しぶりに話をすると最近牛が増えてしまい、総頭数で32頭になっているということでした。
今は逆に余った牛をどうしようかと考えているそうです。
それまでの牛の病気が多いときには、なかなか牛が増えなかったのですが、病気が出なくなると牛の更新をしなくなるので、自然に牛が増えていくのです。
これは、酪農家でよくあるパターンですが、牛がなかなか増えない酪農家では、基本的に病気が多くあり更新しなければならないのですが、このような酪農家の傾向としては、あまり儲からない(経営が厳しい)ところが多いように思います。
同様なことは、肉牛の繁殖農家にもある傾向です。
とこで、吉田さんのところの牛は、ブラウンスイスとジャージの2種類の牛を飼っていて、よく見かける白黒のホルスタイン種はいません。
ブラウンスイスは、乳タンパク質が多い牛で、ジャージは乳脂肪が多い牛です。
ブラウンスイスは特にチーズに合った牛乳といわれていて、日本では、吉田さんと島根の木次乳業の日登牧場と北海道の新得町の共働学舎の3つが有名でそれぞれ美味しいチーズを作っていますので機会があれば是非一度食べてみて下さい。
(味には好みがあるからコメントは難しいですが、私個人の感想をあえて言うなら木次さんは比較的あっさりした感じで、吉田さん、共働学舎さんは、濃い味といった表現になります。)

月曜日, 9月 24, 2007

イタリアンライグラスのこと

イタリアンライグラスは、秋播きの牧草で1番作られている品種です。
作りやすい品種で、田んぼの裏作などに昔から作られていました。
でも、なかなか品質の良い、サイレージ・ロールパックサイレージなどを見かけることがありません。
栽培しやすいのが品質の良い牧草であるとは、限らないのです。
これは、イタリアンライグラスが悪いわけではなく、その特性を理解していないからだと思います。
これも、ある事例ですが、どうしても播種前に、堆肥(糞尿)を多く入れています。
これは、頭数と畑の面積との兼ね合いでしかたないのですが、それと同時に、肥料(化学肥料)も一般的には、40-60kg/10a程度入れています。
しかし、ここで問題は、よほど気温(地温)が高くないと、堆肥からの窒素などは土壌で分解されにくい状態ですから効きが悪い(肥料効果がない)ことになります。
そのために、春先(3月くらい)に窒素系肥料(尿素ですが)を撒くことをやっていました。
尿素は、40kg/10aでした。
そのロールサイレージは、とても臭いがひどく、牛もほとんど食べないものでしたから、まずは、春先の尿素を10kg/10aにして(ほんとうは撒かないようにと話したが、心配で撒いていた)、刈り取り時期を今までより2週間ほど早めました。
これだけのことですが、結果は、非常に良いロールサイレージが出来て、かつ牛の嗜好性はよくて、食い残しがないようになりました。
イタリアンライグラスは、非常に吸肥力があり、また出穂期をすぎると栄養価が非常に落ちてしまうので出来るだけ早く刈ることがポイントです。
吸肥力が強いので、追肥として撒いた尿素からの窒素分が急激に吸収して、また地温が上がることで堆肥も分解されて窒素分が出てきますからこれらの窒素を過剰に吸収していきます。
作物生理では、窒素と加里はいわゆる贅沢吸収する成分ですので、窒素も多ければ加里も多い草になります。
これで、刈り遅れてしまうと、牛か見たら「暑くなるのに、これはないだろう。もう体がもちません!!」と言いたいでしょうね。

日曜日, 9月 23, 2007

低脂肪原因は?

粗飼料がいいかどうかで牛の成績が決まると言っても過言ではないのですが、今年の夏に起こったケースがあります。
それは、酪農家でのことですが、自家産のイタリアンロールを給与して不足分を稲わらや購入乾草のアルファルファとオーツヘイ(えん麦)を粗飼料源として給与していました。
しかし、自家産のイタリアンロールが刈り遅れで水分が低いために摂取量が上がらない状況で夏になってしまったら、急激に乳脂肪が低下してしまいました。
特に今年の夏は、非常に暑かったので、牛自体の乾物摂取量が上がりにくい事情もあったのですが、自家産のロールをほとんど食べない状況になっており、代替でアルファルファやオーツヘイを給与しても乾物摂取が上がらないので、ルーメン機能が狂って乳脂肪が低下したのですが、実はその他にも問題がありました。
この問題は、「おから」にあったのです。
おからは、豆腐屋さんから無償でもらっているものですのでずっと給与しているのですが、おからに含まれる脂肪分が乳脂肪をより低下させていたのです。
これは、NRC2001にもありますが、夏場のような時期は、乾草などの食い込みが低下しますが、そのときに脂肪分が多い飼料を給与すると、ルーメン内で脂肪合成を阻害する作用が起こり、それでなくても繊維不足で低脂肪になりやすいのに、それを助長していることになります。
特に、飼料中に含まれる多価不飽和脂肪酸が多いものが、問題です。
これが多いものとしては、青草(生草)や大豆油などが代表的なものです。
おからも、原料は大豆ですから、比較的脂肪分が多い飼料ですから、このようなことが起こったと考えています。
実際に、その低脂肪対策として行なったことは、
①イタリアンロールをやめてやや水分の高いスーダンロールへの切り替え
②分娩後3ヶ月程度の牛には、おからをやめる
③配合飼料の給与量を最低でも10%少なくする

その結果、1週間で3.1%だった脂肪が3.5%になりました。
おからだけが犯人ではありませんが、同じようことが今年何ヶ所で相談ありましたから、どんなものでもいかに特性をとらえて上手に使うかがポイントですね。

土曜日, 9月 22, 2007

良質な粗飼料とは?

ひさびさの投稿です。ちょっとお休みしていましたが、少し時間が取れるようになったので再開しました。
最近よく和牛繁殖の牛舎に行く機会が多いのですが、輸入の乾草をやっているのを見ると色は茶色でしかも枯れた葉や茎まで混ざったものがあります。
なかなか価格も高いので、価格との折り合いがついたものがそのような乾草のようですが、その現場に限って問題が発生しているのです。
問題は、子牛が大きくならないので、配合飼料を多くやることになり、かなり肥った牛になっていますし、親牛は繁殖でも種付けがうまくいかないといったことですが、明らかに粗飼料の影響です。
そこで、説明するのは、牛のルーメンでは、枯れた葉や茎は全く分解されずに腸に行き、ほとんどが糞にしかなりません。しかもその過程でルーメンでは繊維分解菌は分解できない枯れた葉など一生懸命酵素を出して分解することは行なうのです。(すごい無駄なことを)
そのために本来利用するべき分解されたものは出来ない上に栄養のロスまで出ています。
乳牛などでは、毎日牛乳を搾るのでこのようなことが起こると、すぐに乳量が下がるのでわかるのですが、子牛の育成や、母親牛などでは結果がすぐにわからないので、牛飼いさんは、使っている配合飼料が悪いとか、種雄牛が悪いとか、場面では母親牛のせいにする人もいます。

そのような場合には、せめて母親牛には、分娩前後1ヶ月でもプレミアムなチモシー乾草をやって下さい子牛には、枯れた葉や茎がない乾草をやって下さい。
牛は、草食動物ですから、よろしく頼みます。