牛のこころ、人知らず

日曜日, 1月 28, 2007

牛乳の文化論3

ニュージーランドの牛乳がいわゆる「牛に草を十分食べさせている牛乳」に間違いはないと思います。
しかし、私も飲んだことがないので味が良いか?(おいしいか?)まではわかりません。(苦笑)
ところで、放牧をしていると、よくわかるのですが、放牧をするということは春から夏と秋までですが、この時期の牛乳は「さらっとした口ざわりの味わい」になります。
そして、冬には「濃厚な口ざわりの味わい」になります。
これは、放牧で草を食べると、比較的牛乳中の成分が薄くなりやすいために、「さらっと」としたものになり、冬は、「貯蔵飼料」としてのサイレージや乾草なので、「濃厚」になるのです。
このことから、夏は季節がいいために(もちろん牛にとってですが)子牛に対して、あまり気を使わない??(季節のストレスが少ない)ことかもしれませんが、冬は、寒くてカロリーが必要なので、濃くしておくという自然のサイクルと一致したような気がしませんか?
最近は、技術が進んだために、夏場の乳成分が低下することは、あまりありませんが(たまに相談がきますが)、以前は放牧をしていると、特に乳脂肪が低下して3.0%以下になって相談を受けることがありました。
高泌乳牛に移行してきたことで、牛の遺伝的な改良も進み、乳成分が低い牛はあまり残されなくなってきて成分も高い牛が残ってきたことも影響があります。
しかし、一方では牛乳が売れないということがおきて、今は生産調整ですので、牛乳が搾れないといことから、より牛乳を含めた消費拡大が必要ですが、最近の牛乳消費のためのCMを見ると「がっかり」します。あれを見て牛乳を飲む気になりますか?なると思いますか?
一方では、牛乳・乳製品の悪玉論が掲載された本が100万部売れたという現象から、牛乳の消費拡大はなかなか難しいというのが現状ではないでしょうか!!
子どもの人口も減り、学校給食向けの牛乳も伸びることはありません!アレルギーも深刻です!
さてどうしたらよいのでしょうか?

水曜日, 1月 24, 2007

牛乳の文化論2

文化とはと考えると難しい話になるので、牛乳に対する考え方ということになるのでしょうか?
あまり考えると、哲学的な思考に向かうのも、面白いことですが、とりあえず話を戻すと、日本もアメリカでも乳牛は、基本的にたくさんの乳を搾っていこうという考え方で、これは先進国のすべてあるというとそうでもないのです。
最近の事情は、わからないのですが、約10年前にドイツに行くと西部地域では、いまだにドイツ赤白牛と呼ばれる乳肉兼用種を飼っていて、3産すると肥育して肉牛として出すことを行なっていました。
ところが、オランダに行くとホルスタイン種で、高泌乳牛もいました。
ヨーロッパでは、フランスは独自の体系があり、認定されたチーズなどの原料にする牛乳については、かなり厳しい規制があるそうです。(例えば、サイレージのような発酵したものは使わないなど)
そのようなことをして、チーズの付加価値を高めてかつこだわりの製品にしていることも大切なことでしょうね。
ところで、10年くらい前から日本で販売されている「免疫ミルク」(スターリーミルク)ですが、これは簡単に説明すると、乳牛に人の抗体を注射して、人が利用できるに有効な免疫抗体を作ることが出来るようにした粉ミルクです。最近いろいろな雑誌に紹介されてたりして注目されている健康食品です。
この研究は、アメリカでされたのですが、製造しているのは、ニュージーランドです。
最初、なぜアメリカで製造しないのか、わからなかったのですが、牛乳についていろいろ調べると、その第1は、ニュージーランドは、ほぼ完全な季節分娩ですので、濃度の高い時期の牛乳が集まることと
ニュージーランドの牛乳の単価は、約10円前後(年により変わる)ですのコストが安いなどと考えたのですが、なんせ牛乳単価安いために、ニュージーランドでは、草しか食べさせることが出来ないので、1頭当たりは、大変低い牛乳生産量です。
しかし、彼ら(ニュージーランドの人たち)と話をすると、1頭当りでなく、1ha当りでいくら搾るか(生産するかが)が大切なことであると言います。ですから、1haに何頭の牛を飼えるかが、勝負になると言います。そのために、草地の管理技術が非常に進んでいる(放牧のための)のです。
そのために、草以外余分なものを食べせることがないので、今個人的には、非常に質の良い牛乳ではないかと思います。(技術的な観点からみた、牛乳で)
しかし、その多くは輸出用に、加工(脱脂粉乳などに)されているのです。

日曜日, 1月 14, 2007

牛乳の文化論

牛から見ると、乳牛では「より乳が出るように改良させられた」と言うべきなのでしょうが、本来牛乳を含めた「乳」で見ると、この「乳」は子どものもので(子牛もの)それの分け前を利用しているのですが、家畜文化から見ると、牛の位置付けを「人」の目線で見ると、人が利用できないものを食べて「人」に有益な「乳」を供給する動物であったはずです。
それは、牛では草を食べて栄養分する能力を持っていることがこれまでの共存できた理由だと思います。
ところが、この「草」だけで生産していたのは、遠い昔話の時代で今は、多くの乳牛では、とうもろこしや麦などの穀類などが与えられて、より多くの「乳」を生産することになりました。
この傾向は、世界中の先進国(欧米)では行なわれていることです。
そのために、より乳が出るように改良されて、今では1頭で20,000kg/約300日程度の期間に出す牛も珍しくなくなっています。
これらの生産工場させる技術を現地で指導することも、小生の仕事ですが、最近では「たくさんの乳を出すこと」イコール「儲かる経営」ではなくなりつつあると感じています。
それは、たくさんの乳を出すことが、売り上げの向上になるのですが、その過程では、多くの難問が待ち構えているからです。
それは、これらのたくさんの乳を出すことを、この業界では「高泌乳技術」と呼んでいますが、これを維持安定させるためには、牛舎(牛を飼う建物)での環境を良くして、牛のストレスをかけないことが必要ですし、実は牛に1番ストレスを与えることは、「草」(業界では、粗飼料とよんでいます)を十分に食べないこと(多く場合は、食べさせない)です。
この「粗飼料」が十分食べないことから始まる問題が、「高泌乳技術」のときに1番の問題になります。
その問題が発生した結果が、1番現れているのが、乳牛での平均のお産回数が、2.8回と言われています。すなわち3回のお産になっていないのです。
牛は、お産回数(産次数といいます)が1~2回では、まだ体が発育するために栄養分が体の成長に使われるために、3回目(3産目)以降で乳量のピークを迎えるのですから、平均が2.8では、ピーク前には、搾乳されていない牛がいるということです。
この問題は、日本だけでなく、アメリカでも同様の傾向のようです。

ですから、最近の乳牛での仕事では、いかに粗飼料を食べさせているのか、なぜ食べさせないのか、どうしたら食べるのかを重点に行なっています。

月曜日, 1月 08, 2007

牛乳が余って

今酪農では、生産調整をしています。
牛乳が売れないので、牛から出す乳を制限しています。今年度中(3月)までは地域により差はありますが、どちらかと言えば、牛乳の生産地帯が大きな影響を受けているようです。
影響というのは、この生産調整を予定入れないで、設備投資をした人たちは予定通りの生産は出来ないは牛乳の販売単価は下がるはと設備償還計画に影響が出てきています。
それとは別に経営が悪化している酪農家がいます。
これらの農家は、牛に食べさせる「えさ」のほとんどを購入していた人たちです。
どういうことかといえば、現在ほとんどの酪農経営では、
「配合飼料=輸入された穀類や粕類を工場で混合してペレットやフレークしたもの」
「自給粗飼料=自分の畑で作った草やとうもろこしなどのサイレージなど」
「輸入乾牧草=アメリカやオーストラリアなどから輸入された乾燥させた牧草類」
を給与しています。
昨年より、ポジティブリストの義務付けに伴い、輸入されている乾牧草類の日本での未登録の農薬規制が適用されたために、乾牧草類の価格が高騰しています。
そのために、購入依存型の経営をしている農家では、牛乳価格の下落と購入するえさの価格が上がったために、差し引きされる粗利益がなくなってきたのです。
それに追い討ちをかけるように、オーストラリアの旱魃の影響で、小麦価格が高騰したために世界的に穀物価格の上昇により、配合飼料価格も年明けの1月よりトン当たり5,000円前後のの値上げになっています。(配合飼料の場合は、基金が補填されますが、それは後からの戻りになるので支払い価格は上がります)
それに加えて、3月の年度末までの生産枠の問題(オーバーしないように)で地域によるとより一層の出荷制限になるところも予測されますので、年明けからの経営状況は悪化するのではないかと予想しています。
しかし、そもそも牛乳の販売が落ち込んでいるのは、ここ数年の傾向ですし、欧米などでは飲用乳の消費はすでに落ち込んでいて、チーズ以外の乳製品も落ち込みの傾向になっています。
日本も少子化で人口が減少してきているので、同様の傾向になりますし、一方牛乳に対する批判も目立ってきているのも影響していると考えています。
消費の拡大のためにいろいろCMなどもやったり販売促進したりしていますが、あまり効果があるとは思えません。どうも見ていると、米の消費拡大と同じようなこをやっていて結局なりゆきまかせになるのではないかと危惧しています。

どうしても発想が、垂直方向にしか向いていないようで、もう少し水平方向に向けると変わってくる面があると思うのですかどうでしょうか??

日曜日, 1月 07, 2007

堆肥をどうしよう?-6

堆肥の見方として、4つの条件を挙げていますが、それぞれの内容を説明すると
①の手で触るとさらさらしていること
これは、堆肥が発酵していくと、いろいろな微生物が入れ替わりで自分で利用できる成分を分解していきますが、そのときに死滅した微生物の殻(専門的には、莢膜と呼ばれている微生物のえさを探すときのセンサーのようなものです)が残っています。この殻の部分がわかりやすく言うと、ガラス質みたいなものですから、触った感じが「さあさら」あるいは「すべすべ」したような感じになっています。

そのために、②も同様に、光るというのは、このガラス質みたなものが光を反射することです。

③の散布するときに「臭い」がないというのは、散布する際に、くさい臭いがしているものは、まだ発酵が半分も終わっていないもので、生よりはましな程度のものです。
しかし、臭いについては、感覚的なものがありますので、表現が難しいのですが、わかりやすい「臭い
」では、堆肥が発酵してくると、中程度の時には、放線菌という微生物がでてきるのですが、その時の臭いが、「薬くさいにおい」という感じになります。そのために散布している時に、臭いが「薬のような臭い」であれば、堆肥としては、中程度の発酵をしてもの(中熟堆肥)です。
現在、完熟堆肥であればよいのですが、いろりな条件で完熟まで作れなくても、中熟堆肥であれば、十分りようできますし、ある程度の肥料分も残っているので、肥料の効果も期待できます。
そのために、せめて中熟程度の堆肥作りが必要です。

④は、よくホームセンターなどで販売されているものや自分で堆肥を購入される方などに説明する時にこの方法を試してもらうのですが、実際十分に発酵しているのか、ただ単に乾燥させたものかの区別はなかなかつかないので、実際に焼いてみると、中途半端なものは、アンモニアなどのいやな臭いがしてきます。これらは、もしかするとただの乾燥堆肥で土壌に入れると病気の原因菌などを増やすかもしれませんので、使わない方がよいでしょう。しかし、臭いしなかったり、芳香臭がするものは、完熟化された堆肥ですので、使っても大丈夫でしょう。

これらの、基準で自分の堆肥やほかの堆肥を見比べて見てください。

金曜日, 1月 05, 2007

堆肥をどうしよう?-5

堆肥の話が長くなりますが、乳牛にしろ肉牛にしろ牛乳を搾るためや肉をつくるためににエサをやりますが、必ず糞や尿をしますので、この問題の対策をしておかないと実際に「牛飼い」ができなくなってきていることも事実です。
しかし、よく考えると「人間」の場合も同じことなのですが、トイレを水で流せばよいだけの環境に慣れてしまうと、それが当たり前になっていて意外とわからないのではないでしょうかね----?
いまだに、田舎にいくと汲み取り式のトイレはありますが、さすがに「肥溜め」は見なくなりました。
かつては、人の糞尿も立派な肥料であったわけですが、そんな昔話をしても意味が無いと思うのはとんでもないことになる可能性はあります。
将来危惧されていることとして、肥料成分の1つであるリン酸分の原料が枯渇する可能性がいわれています。リン酸は主に鉱石から取り出していますが、この先不足することが懸念されているのです。
そのことが、人の糞尿とかかわりは、実は人の糞尿には、家畜の糞尿よりもリン酸分が多いことがわかっています。しかし、今は汚水処理されて河川への放流されていますが、この先は人の糞尿も有効利用する必要が高まると思います。(実際に取り組んでいるところもあるそうです)

話を戻すと、良い堆肥・悪い堆肥の区別については、あまりはっきりとした基準がありません。
そこで、私が現場でする良い堆肥とは、
①手で触ると、さらさらしていること(水分は少ないほうがよい)
②光にかざすと少し光るようなもの
③散布する際に、臭いがないもの
④最終的には、その堆肥をアルミホイルの上で焼いてみることです

実際に、完熟になった堆肥は、微生物が多くの成分を分解したために肥料分としての効果はあまり期待できないものが、多いのですが、それを使うことによる効果は、作物がすぐに反応してくれます。
これは、元京大の小林達治さんの有名な実験がありますが、水槽の中に、半分を完熟された堆肥を半分にはただの土を入れて、その境界線にとうもろこしの種を植えると、ほとんどの根が完熟堆肥に向かって行くといいうものです。

次には、①~④までの堆肥の見方について考えましょうか!!!

木曜日, 1月 04, 2007

堆肥をどうしよう?-4

堆肥作りには、十分な酸素の供給は必要です。
しかし、過剰な酸素の供給は、微生物が起こす分解作用に邪魔になることがあります。

今回のケースでは、毎日毎日攪拌することで、微生物が分解する時間を与えていないということになります。
実際に堆肥を作る場合には、堆肥の温度が上がってくると、微生物の分解が進んでいる証拠みたいなものですが、その際に十分に温度が上がってやや温度が下がったころに切り返し(攪拌)を行なうことが大切です。

堆肥が出来上がるまでには、多くの種類の微生物がかかわってきていますが、最初は糞中にある分解されやすい成分を利用する(食べるという言い方もありますが)微生物が多くなり(繁殖し)ます。
これは、糞を生のまま土(土壌)に返した際には、この分解されやすい成分を土壌中の微生物が利用するのですが、どちらかと言えばこれらの微生物は、作物などから見ると困ったやつらで、いわゆる病気の原因になったりする悪玉微生物の側に属したものです。

ですから、化学的なことからすると、生糞尿には、窒素や加里などの肥料成分は堆肥化するより多く含まれるのでそのまま肥料として利用方がよいという考え方もありますが、一方では、病気などの発生するリスクも高まりますので、現在は生より堆肥の方を使う方が多いようです。
特に、良質な堆肥を使うと、作物の品質が向上することは多くの試験などで実証されています。
そこで、ただ攪拌すればよいのではなく、十分に微生物の活動ができるように時間を置くことが必要なのです。ですから、今回の装置の使い方は、発酵させるのではなく、まさに攪拌させるだけの装置になっていたのです。
そこで、この場面での答えは、毎日攪拌させるのではなく、半月でも攪拌させないでおいてどうなるかをみるべきでしょう-おそらく品温は上がると思います。

-その後、話を聞くと完全にオーバーしてしまし、装置を使っていないとのことでした-
このような話は、どこにでもたくさんあります。

あ-残念ですが!!!!!!

水曜日, 1月 03, 2007

堆肥をどうしよう?-3

堆肥に水分調整されていないと、いわゆる発酵が起きません。
そこで、堆肥作りには水分調整剤を使わなくてはいけないのですが、ここで困った問題があります。
それは、水分調整剤を加えた分だけ容量が増えてしまうのです。
意外とこのことを理解されていないケースに出くわすことがあります。
これは、当然ことで本来糞だけであれば、発酵させると水分が減り、容量(がさ)が減ってきます。
そのために、堆肥作りを本格的にすると思ったよりも容量が少なります。
しかし、水分調整剤を多く混ぜ込むと、予定していた容量より多くなり、堆肥の堆積場が間に合わなくなることになります。実際に堆積場からあふれた堆肥をどうしようもなくなり、また堆肥の発酵装置に入れるといった笑えないような話もあります。
これらのことは、いかに堆肥作りの基本をわからないで、機械任せ(あるいは業者任せ)したために起こるもので、自分で堆肥作りを考えていけばもっとよい方法があったのではないかと思う現場が最近あまりにも多くあります。(残念なことですが)
また、ある装置は。毎日堆肥作りのために。1日1回の糞を攪拌するようになっていたのですが、全く温度が上がらないで、ただ攪拌を行なっていました。
農家の方に、「これでは堆肥にならないでしょう?」と聞くと「全く温度が上がらないので、堆肥になりません」という答えでした。そこで、「これからどうするのですか?」と聞くと、「メーカーに調整してもらっていますから、そのうち大丈夫でしょう」ということでした。
この話を聞いて、思わず「このままでは難しいかもしれませんね」と言ってしまいました。
農家さんは、「どうしてですか?」と聞かれたので、「これでは、堆肥を作る微生物が繁殖できないでしょうね」と答えると、農家の方は、全く意味がわからないようでした。
さて、皆さんはこの答えがわかりますか? ちょっと考えてみてください。